買ってはいけない収益物件(その1、無届け建築物)

 賃貸アパート、賃貸マンションなどのいわゆる収益物件の需要が増大しています。しかし、重大な瑕疵があることから本来であれば購入するべきではない物件を購入してしまう、または相場よりかけ離れた高額で高値づかみをしてしまい、後悔する方が増えています。

 不動産会社の営業担当から早く購入するように迫られても、チェックを怠ってはいけない項目および内容があります。本日から何回かに分け、これらを解説します。

収益物件の売買、売買仲介を行う不動産会社が激増
 本題に入る前に、最近の収益物件における需要の急増と値上がりについて説明します。賃貸アパートや賃貸マンション(以下、収益物件)の売買を行う不動産会社は、数年前迄はあまり多くありませんでした。しかし、仲介手数料を多く稼げ、転売することにより多額の売却益を得られる物件があるということで、多くの不動産会社が扱うようになっています。

 購入を希望される理由の多くは不労所得を得たい、相続税対策をしたい、老後の年金代わりにしたい等です。政府が「老後は2,000万円の貯金が必要である」とのアナウンスを行ったことも、収益物件の需要を増やす原因になっています。

収益物件の需要が急増したことから値上がり
 東京都区部の収益物件における表面利回りは、数年前迄は年6~8%の物件が多かったのですが、最近では3~5%程度の利回りしかない物件が増えています。収益物件の需要が増えていることから売主(オーナー)が強気の売値を希望しており、値上がりしています。

 また、収益物件を転売する不動産会社が急増しています。最近はコロナ禍であることから多額の転売益を狙い、他業種から不動産会社を新しく立ち上げる動きが顕著です。

 このような不動産会社は現金一括で安く買い上げ、転売益を乗せ、表面利回り3~5%になるように価格を調整して再販します。このような業者が増えていることも、値上がりの原因です。

 以上の理由により、都区部における収益物件の表面利回りは3~5%の物件が増えており、数年前までに多かった表面利回り6~8%の物件はほとんど無くなっています。

収益物件を購入する方は、いわゆる「消費者」とは見做されない
 収益物件をお求めになられる方は、いわゆる「消費者」とは見做されません。自宅を購入する場合には消費者保護法による保護を受けられますが、収益物件の購入に際し、消費者保護法が適用されることはありません。

 購入した物件に不具合があった場合、売買契約書に契約不適合責任免責の特約条項が規定されていなければ、売主に契約不適合責任を問うことができます。しかし、この特約条項が規定されていることがよくあり、不具合に起因する損害が発生した場合は、その損害を購入者が被ることになります。物件の選択を誤ると、最悪の場合には全財産を失うことがあります。

 今日は、法的瑕疵があるために購入してはいけない物件について書きます。これらの物件は、どれだけ安い価格を提示されたとしても購入を避けるべきである物件です。

購入していけない物件(法的瑕疵)
1.無届け建築物
 「特別に安い非公開物件があります。」といわれた物件が無届け建築物であることがあります。無届け建築物は、行政により取り壊し命令が発令される可能性がありますので、絶対に購入するべきではありません。

 現況満室で賃貸中の賃貸アパートで、かなり安い物件があったので調べたところ、無届け建築物であったことがあります。東京都23区内でも、このような物件が存在します。 

 購入する際に、不動産会社の営業担当から「無届け建築物であっても、現況が賃貸中であれば取り壊し命令は発令されない」とか、「無届け建築物は多数あり、取り壊し命令を一斉に発令したら大混乱になるので発令されることはない」と言われたとします。このように言われても信じてはいけません。

 確かに、現況賃貸中の賃貸パートに対する取り壊し命令は、入居者のことを考えると発令しにくいように思えます。また、取り壊し命令の発令に際し、大混乱を懸念する行政が及び腰になる傾向があることは否定できません。

 しかし、自治体の首長が交代した直後や何らかの記念日の前後に行政が「違法建築物撲滅」を掲げ、収去命令を集中的に発令する恐れがあります。

 「不動産会社の営業担当者から『取り壊し命令が発令されることはない』との説明を受けていたので、責任は不動産会社にある。」と主張し、裁判を提起しても後の祭りです。

 このような場合は仲介手続きにおける瑕疵の存在が認容されるに過ぎず、不動産会社が物件の購入代金を賠償するように命令されることはほとんどないと考えられます。

 無届け建築物である事実は「法的瑕疵」であり、これが存在する物件は売主において契約不適合責任があるといえます。法的瑕疵がある物件が販売される場合は、ほとんどの物件において特約条項として契約不適合責任の免責条項が契約書に記載されます。それに裁判では「無届け建築物を購入する行為は不法行為を助長する行為である」と見做されます。購入者における落ち度は大きいと判示され、損害の大半は購入者が甘受するしかありません。

購入すると多額の財産を失う恐れが極めて高いので、無届け建築物に手を出すべきではありません。

※続きは、明日の投稿で書きます。