賃貸アパートの階段崩落事故を起こした建設会社が不正融資申請を提案か

2022年5月20日

先日の投稿で、賃貸アパートの外階段において、雨水に晒されかつ耐力が必要な部分に木材を使用し、防水処理を怠ったことから死亡事故が発生した件について書きました。工費を抑え、安値で受注、販売したことから死亡事故を招いたと言えます。

この建設会社が建築した賃貸アパートの中で、階段の劣化などの問題が見つかった物件は57棟に達する(共同通信記事、2022年5月20日追記:元記事は掲載社により削除)とのことです。オーナーは何千万円または何億円という金額でアパートを購入しているところ、建設会社が自己破産を申し立てていることから、補修するための多額の費用はオーナー負担になります。オーナーにとっては頭の痛い大問題です。

どうしようもない位に質の良くない建設会社があったものです。この建設会社は不正融資にも関与していた疑いがあるようです。TBS(JNN)の記事から引用します。

※掲載社の都合により元記事が削除され、リンクが切れることがあります。あらかじめ御了承願います。
※2021年6月5日追記:元記事の削除を確認しましたので、リンクを外しました。

【独自】「則武地所」銀行への不正融資申請を提案か

アパートの施工不良が相次いで判明している則武地所が投資用アパートのオーナーを募る際、「建設費を水増しして銀行から多額の融資を受けることができる」などと持ちかけていたことがJNNの取材で分かりました。

~中略~

 男性が購入を検討したのは神奈川県内の木造2階建てアパート。販売価格は1980万円で賃貸に回した予定利回りは13%以上とされていました。男性は則武地所の会長から、“銀行から不正に融資を引き出す手口の説明を受けた”といいます。

 「建設費用の試算をもとに銀行から融資をもらうんですけど、その試算以上の試算をつくりますよと」(物件購入を検討した男性)

 会長は、則武地所が“建設費用を水増ししたウソの試算を作成し、それを元に銀行に融資を申請すれば販売価格を上回る融資を受けられる。余った金は別の投資などに回すことも出来る”と説明したといいます。

 「そうすれば(1980万円の物件で)銀行から3000万、4000万円の融資がおりますと。すごい自然体で言われたので私もびっくりしてしまいました」(物件購入を検討した男性)

 専門家はこう指摘します。

 「金融機関に対する融資の詐欺に該当すると思います。たくさんの融資を引き出して、オーナーからすると自己資金の引き出しなく(投資でき)不動産会社は顧客を獲得できると」(さくら共同法律事務所 金 裕介 弁護士)

~以下略~

TBS(JNN)

「かぼちゃの馬車」事件では、スルガ銀行による不正融資が大問題になりました。オーナーの多くは一括返済を求められ、全財産を取り上げられた上に破産に追い込まれました。

建設会社が、このような古典的な「かきあげ」を行うとは呆れ果てます。「かきあげ」については、以前にこのブログで詳しく解説しています。投稿先のリンクを貼っておきます。

リンク1リンク2リンク3

この建築会社には遵法意識が全くないのでしょう。そのために階段が崩れ、住人が死亡したと言えそうです。

「かきあげ」が発覚した際には恐ろしい事になるのに、まだこのような愚かな行為を行うとは言葉もありません。このようなことでもしなければ売却先を見つけられなかったのでしょうか?

一括返済を求められてもほとんどの買主は返済できません。手持ちの不動産を手放すだけではなく、全財産を失います。それでも残債がある場合はこれの返済も求められ、返済できない場合は破産(自己破産、破産宣告)することになります。これだけではありません。詐欺罪で立件されることがあり、処罰(懲役、罰金)されることにつながります。

このような事件が報道されると、街中の不動産会社もこのような「かきあげ」行為を行っているのではないかと疑われがちですが、私の会社では従来より「かきあげ」の依頼があっても一切受けないことにしています。

「中小や零細の不動産会社は、どこでも『かきあげ』をやっている。大手の不動産会社の方が安心だ。」とのWEB記事が散見されますが、「どこでも」という点は明らかな誤りです。

大手・中小・零細を問わず、質の悪い営業担当は確かに存在します。現在でも「かきあげ」を提案する者が散見されます。しかし、その多くは営業ノルマを果たせないことから苦し紛れに提案していることが多いです。

「契約が成約できれば、後は野となれ山となれ」の精神で営業活動をしている輩なので、どうしようもありません。

また、「不動産を購入する際に『かきあげ』を頼んだら外車を買えた」、「借金を返せた」などのWEB記事が散見されますが、多くは「かぼちゃの馬車」事件が起きる前の話です。

万が一、「かきあげ」を提案された場合には、それが不動産会社であるか建設会社であるかを問わず、直ちに商談を中止するべきです。「かきあげ」を提案する会社には遵法精神が全くありません。その会社から不動産を購入しても十分なアフターサービスを受けられないことは明らかです。

融資を受ける期間は長期間ですから、その間に「かきあげ」が発覚する恐れは極めて高いです。発覚した場合、金融機関は必ず一括返済を求めます。

発覚した際に「不動産会社から提案された」とか「建設会社から勧められた」と主張しても言い訳になりません。詐欺行為の主犯は買主であり、詐欺による利益を得たのも買主です。この事実はとても重く、金融機関は絶対に容赦しません。

また、「かきあげ」は金融機関に対する詐欺行為であり、犯罪です。金融機関が警察に告訴した場合は捜査が行われ、立件された際には処罰されます。