不動産会社の担当者が立ち会わない内見について

2021年6月5日

新型コロナウイルス感染症の拡大が止まらないことから、不動産会社の担当者が立ち会わない内見が徐々に増えています。いわゆるリモート内見、オンライン内見と言われるものです。

室内を動画撮影し、不動産会社や自宅でお見せする方法がありますが、本日取り上げるのは、不動産会社が室内への入室方法をメールやLINEで教え、不動産会社の担当者が立ち会うことなくお客様に自由に内見してもらう内見方法の是非です。

インターネットのポータルサイトなどで内見をしたい物件がある場合には、情報を掲出している不動産会社に連絡します。従来は、不動産会社の担当者が同行して鍵を解錠し、内見することになります。

最近は、不動産会社の担当者が立ち会わない内見を行う会社が増えています。内見希望の連絡を不動産会社が受けると、鍵が入っているキーボックスの置き場所、およびボックスの開け方を内見希望者に直接伝えます。不動産会社の担当者は一切立ち会わない状況で、自由に内見をすることになります。

この方法の採用により、新型コロナウイルス感染症の原因となる人との接触機会を少なくすることが可能になり、感染防止に寄与します。不動産会社の担当者が同行して内見を実施する際にその内見担当者が感染しているとお客様に感染する恐れがありますし、その逆もあります。

また、このブログでも取り上げていますが、内見を実施している際に不動産会社の担当者が金品や車を強奪される強盗事件や担当者が被害者となる強制猥褻致傷事件が起きています。犯人は不動産会社を訪問し、「内見希望」と偽り、不動産会社の担当者と同行して部屋に立ち入ります。そこで犯行に及ぶわけです。

事件が頻発したことから、警視庁は不動産関連団体宛に「内見希望者の身分確認を徹底するように」との通達を出しています。しかし、お客様が内見される際に身分証明書の提示を求めると、「他の会社に行くからいい」と言ってお帰りになる方が多いです。

身分証明書の提示を求める理由は、不動産会社の担当者が内見の際に強盗などの被害に遭遇した際に犯人の身元を特定することにありますので、不動産会社の担当者が内見の際に同行しなければ、身分証明書の確認は不要との解釈も成り立ちます。

不動産会社としては新型コロナウイルスに感染する原因である人との接触機会をなるべく少なくし、強盗などの被害も避けたいです。警視庁からの通達については「不動産会社の担当者が同行しなければ、身分証明書の提示を求める必要はない」との解釈も可能です。また、不動産会社において大きなコストである人件費の削減が可能になります。このため、不動産会社の担当者が立ち会わない内見方法を取り入れている会社が徐々に増えています。

しかし、いくつかの問題点があります。

問題点
1.お客様による鍵の紛失や返却忘れが相応の頻度で発生する
特に返却を忘れて持ち帰る方が多いです。あるお客様が内見された直後に別の内見希望者が現れたとします。このお客様が物件を訪問した際に、鍵が入っているはずのキーボックスに鍵が入っていないと不動産会社とお客様との間でトラブルになります。

2.合鍵を作成される可能性がある
お客様が鍵を持ち出して近くの鍵屋に持ちこみ、合鍵を作成されることがあります。合鍵が作成されると、何らかの犯罪行為につながります。

3.室内を汚された、設備を壊された等をされた場合でも、内見した方への責任追及が困難
稀に、内見の際に室内を汚す方がいらっしゃいます。特に夏の時期にはソフトクリームを手にした子供を連れた家族が内見すること等があります。内見後に床や壁クロスが汚れ、シミができていた等のトラブルがあります。

また、親が室内の見学で夢中になっている際に子供がキッチンで遊び始めて水道栓を壊す、壁クロスの端からクロスを剥がす等を行い、設備や室内を傷めることがあります。内見した方に責任がありますが、不動産会社担当者の立ち会いがないことから、売主または貸主が内見した方に修繕費を請求することは困難です。

4.犯罪に利用される恐れがある
5月27日の日テレNEWS24の記事(6月5日追記:元記事削除のためにリンクを解除しました)によると、暴力団員が「飛ばし携帯」用のSIMカードを受け取る拠点として、リモート内見ができる部屋を利用していたとのことです。

その他にも小型の盗撮用カメラを室内に置かれ、入居後に盗撮動画や映像がネットで売られる事件等が発生しています。

現在の内見方法について
内見のシステムは変革期を迎えていると思います。機器の技術革新により、「鍵」を使わずに内見できる方法が開発されれば、犯罪の発生について心配することなく、不動産会社の担当者が立ち会わない内見を行うことが可能になると思います。ただし、この場合でも上述の「3」については対応が難しいと思います。