家賃を滞納する借主に裁判で明け渡し請求をする場合(オーナー様へ)

今日の投稿は、家賃を滞納する借主に対し、明け渡し請求を内容とする裁判を提起する場合についてです。

家賃の支払いを断固として拒否し、退去を求めても聞く耳を全く持たない借主には、明け渡し請求を内容とする裁判を提起して明け渡しを確定判決として認めてもらい、最終的には強制執行を行ってもらうことにより、退去してもらう必要があります。

昨日の投稿に書いた通り、家賃の滞納が3か月以上続いた場合でないと裁判所は訴状を受け取りません。裁判を提起する場合は、滞納家賃を一括で支払うことを求める督促を内容証明郵便で行い、賃料の滞納が継続された場合には賃貸借契約の解除をする旨を内容証明郵便で予告しておくことが必要です。

その後は訴状を作成し、裁判所に訴えを提起します。滞納家賃の一括支払と、借りている物件の明け渡しを求めることになります。訴状はオーナーが自ら作成しても構いませんが、弁護士に作成を依頼すれば間違いがなくて済みます。この訴状は、不動産会社では作成することが認められていません。

訴訟の提起後、約1か月で口頭弁論が行われ、その後約1か月で判決が出ることが通常です。なお、借主が口頭弁論などで異議を申し立てた場合は、さらに日数を要します。

確定判決は借主にも送付され、1週間後に確定します。その後は裁判所の書記官に執行文付与および送達証明の交付を申請します。

執行文付与および送達証明が交付された後、執行官室に赴き、強制執行の申し立てをします。通常は2週間程度で執行官が明け渡し対象となる物件を訪問し、約1か月後に強制執行の「断行」を行うことを催告します。

催告を受けた後に、借主が自主退去を申し出ることがあります。自主退去が行われない場合は、約1か月後に執行官と執行補助者による「断行」が行われ、全ての家財が執行補助者が用意する倉庫に搬入され、錠前が交換されます。室内に借主がいる場合は、強制的に排除されます。なお、借主が動産の所有権を放棄する書面を提出している場合は家財の倉庫搬入を行いません。廃棄処分になります。

所有権放棄の書面が提出されない場合における家財の保管期間は通常1か月です。借主による引き取りが期間内にない場合は倉庫で動産競売が行われます。通常はオーナーが買い取り(落札)、廃棄することになります。

断行が行われるまでには、訴えの提起から数ヶ月を要します。また、執行官室に支払う予納費用はワンルームマンションの場合で7~9万円、家族用区分マンションや二階建て戸建住宅の場合で20~30万円程度です。

断行当日に家財を運び出し、借主を排除する執行補助者に支払う費用が最も高く、50~120万円程度を要します。豪邸や大きな建物の場合は、更に多額の費用が必要です。その他に弁護士報酬として40万円前後が必要です。

滞納賃料は、最後まで支払ってもらえないことが多いです。差し押さえを行い、資産の売却をしても回収できないことが大半です。

つまり、ワンルームマンションの区分一室でも100万円、賃貸用戸建住宅の場合は200万円前後の費用がかかり、その他に約半年分の家賃収入も回収できないことになります。

裁判による明け渡しを行うと莫大な日数および費用を要しますので、可能であれば任意の引渡をしてもらうのが日数と金銭の節約につながります。任意の引渡を求める場合はオーナーから「滞納家賃を免除するので直ちに退去して欲しい。引越代を補助しても構わない。」と伝えて交渉をすることが多いです。