民法、宅地建物取引業法等の改正により契約書が複雑になっています

法律、施行規則の改正が続いています

2022年5月18日に施行された改正宅地建物取引業法

 不動産売買契約または賃貸借契約に先立ち実施される重要事項説明および契約の電子化が可能になりました。

 また、重要事項説明書および契約書における宅地建物取引士の押印義務が廃止されました。

2022年4月1日に施行された改正民法

 成人年齢が18歳に引き下げられました。これにより18歳以上であれば自らの意思により不動産賃貸借契約および売買契約を締結できるようになりました。

2020年8月に施行された改正宅地建物取引業法施行規則

 重要事項説明の際に水害ハザードマップ(洪水、雨水出水、高潮)を説明することが義務化されました。物件所在地において水害に遭遇する恐れがない場合でもその旨を説明することが義務づけられました。

2020年4月1日に施行された改正民法

 危険負担が債権者主義から債務者主義になり(正確には債務者において反対給付債務の履行拒絶権を認める)、危険負担の発生時期が「契約時」から「引渡し時」に変更されました。

 「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に改められ、買主による追完請求権、代金減額請求、損害賠償請求権(売主に帰責性がある場合)、解除権が認められることになりました。

 連帯保証人を立てる際の要件が厳格化されました。不動産賃貸借契約の締結および更新に大きな影響を与える改正であり、不動産業界を大きく揺るがしました。

重要事項説明における説明内容が増え、契約書も複雑化

 重要事項説明書および契約書の雛形は短期間に繰り返し変更されています。これらの法改正は不動産売買および賃貸借の際に生じるトラブルを未然に防ぐことと、それでも万が一トラブルが発生した際に解決を容易にすることを目的としています。これに伴い重要事項説明および契約締結時における説明項目が増え、極めて複雑化していると言えます。

不動産に関する契約書の作成は不動産会社に依頼するべき

 仲介手数料や事務手数料の支出を惜しみ、不動産に関する契約を不動産会社を通さずに行うことを考える方が未だに多いです。「契約書に書いておけば何でも有効」と考える方が多いのですが、法律、特に強行法規に反する内容であれば無効とされ、裁判で争う際には当該条項は存在しなかったものと見做されます。

 例えば賃貸借契約書に「家賃を2回滞納した場合は契約は自動的に解除され、貸主は借主の許可を得ることなく室内の物品を廃棄できるものとする。」という条項を設けていた場合、裁判で争いが生じるとこの条項は無効と評価され、貸主が全面的に敗訴します。民法第90条が定める公序良俗違反に該当すると認められるからです。当然ですが、室内の物品を勝手に廃棄した場合には貸主は多額の損害賠償を請求されます。

 普通建物賃貸借契約における契約期間は1年と定められており、これより短い期間を定めた場合は期間を定めない賃貸借契約と見做されます。貸主が「期間6か月の短期貸しで、6か月後に必ず退去してもらう」つもりで「契約期間6か月の賃貸借契約」を締結したとします。この場合は期間を定めない賃貸借契約になるので、6か月が経過しても退去を求めることはできません。

 連帯保証人を立てる際の要件が厳格化されました。連帯保証人を引き受ける方には極度額(連帯保証債務を履行しなければならなくなった際に請求される可能性がある最高額)を告知しなければならなくなりました。極度額を告知していない場合、その連帯保証契約は無効とされ、家賃の滞納が発生しても連帯保証人に代位弁済を求めることはできません。

 契約書を貸主または売主が自ら作成し、不動産会社を利用せずに契約を締結すると、後で多額の損害賠償を請求されることがあります。貸主または売主においても、契約書に強行法規に反する内容の条項を設けたことが原因で損害賠償を請求できなくなる等の不利益を被ることがあります。

 仲介手数料、事務手数料等が発生しますが、重要事項説明および契約書の作成は不動産会社に依頼することを強くお勧めします。