地方の戸建住宅を収益用戸建にする際の注意点

WEBサイト、ブログ、雑誌等で成功例が多く取り上げられているが...

 都心では利回りが良好な収益用不動産がなかなか見つからないということで、郊外や地方の古い戸建住宅、それも廃屋に近づきつつある空き家の物件を探し、DIYを活用して徹底的にリフォーム代を削減して賃貸用戸建住宅に仕立て、高利回りで運用している方がいらっしゃいます。

 成功例がWEBサイト、雑誌等で多く取り上げられており、詳細に関する有料のセミナーが開催されています。しかし、注意点が数多くありますのでこれらについて解説します。

雨漏りに注意

 「自分にもすぐに出来そうだ」と考えたことから地方の空き家を探して購入し、自身でリフォームを始める方がいらっしゃいます。しかし、工務店等における実務経験がない方の多くはどこかで行き詰まることが多いようです。この場合、プロに依頼して多額の費用を支払ったことから思うような高利回りの物件にはならなかったという事案が数多くあります。

 古家の場合、よくあるのは雨漏りです。屋根裏に入り、原因となる箇所を探そうとしても屋根裏の構造が複雑であることから雨漏りをしている箇所を見つけられないことがあります。 

 建築士によると「台風などで横殴りの雨が降った場合のみ雨漏りがする」等の場合は雨漏りの原因箇所を特定できないことがあるとのことです。

 原因箇所を突き止めて修理が出来た場合でも、柱や梁が雨水で損傷して強度が著しく劣化していることがあります。酷い場合は損傷箇所がスカスカになり、キノコが多数生え、さらに酷い場合はシロアリが発生していることがあります。

 このような場合は柱や梁の補強では済まず、入れ替えが必要になることがあります。DIYによる対応は無理なのでプロに依頼するしかなく、多額の費用が発生します。場合により解体して再建築した方が安くなることがよくあります。

敷地内の大木に注意

 庭に大木があり、秋になると落ち葉が隣家の庭先に落ちて迷惑をかけていることがあります。空き家をリフォームしていると隣家の方から「毎年、この木から大量の落ち葉が出るので困っている。切り倒して欲しい。」と要望されることがあります。しかし、素人が大木を切り倒すことは危険かつ困難です。

 また、地域の条例などにより一定の大きさを超える樹木については伐採を禁止していることがあるので注意が必要です。

前面道路が私道である物件

 私道所有者の合意により道路幅が広い場合でも車両の通行を認めてもらえない物件があります。その他にも道路の掘削、電柱に光回線を通すことも許されない物件があります。

 この様な場合、私道の整備を誰が行ったかが関係していることがよくあります。付近の土地を所有する複数の方が資金を出し合い私道を整備した経緯があると、私道の持分がない方に冷淡な態度をとることがあります。

 このような私道が前面道路である住宅を購入すると、車両の通行を認めてくれない等の思わぬ不利益を受けることがあります。 

 この場合は私道の維持費について、応分の負担に応じることを約束した上で私道の持分を購入することにより解決できることがあります。しかし、持分の購入を認めてくれず、不利益を甘受し続けなければならないことがあります。

 前面道路が私道である郊外や地方の物件を購入する際は注意が必要です。

水道、下水道

 郊外や地方には下水道が整備されておらず、トイレは浄化槽を用いた汲み取り式であることがよくあります。

 上水道は付近の住民で構成される自治会、または寺や神社が運営する簡易水道、または井戸水であることがあります。この場合は定額の費用を負担するだけでは済まず、設備が故障した際に臨時に維持費を徴収されることがあります。

テレビ電波、インターネット

 地上デジタル放送を受信しにくいエリアがあります。この場合、ケーブルテレビを導入しなければならないことがあります。通常のテレビ放送を受信するだけでもケーブルテレビの利用が必須である場合、費用が毎月発生します。

 インターネット回線は光回線が必須です。しかし、光回線を導入する際には多額の費用負担を求められるエリアがあります。

 収益用戸建住宅の場合、郊外や地方の物件でも光回線が敷設されていることは必須です。借主の多くは在宅勤務を行う場所として利用することを考えているため、光回線を利用できない戸建住宅に対する需要はほとんどないのが現状です。

野生動物、昆虫(スズメバチ)など

 いわゆる里山にある物件の場合、野生動物や昆虫との接触を避けられません。あまり報道されないのですが、鹿、イノシシ、ニホンザル、熊、ヘビ等の野生動物、スズメバチなどの昆虫により住民が負傷する事案がしばしば発生しています。

 野生動物や昆虫が頻繁に出没するエリアでは、これらの存在は日常において当然なので不動産会社が作成する重要事項説明書に記載されないことがあります。売買契約の前に、野生動物や蜂などの出現頻度を尋ねておく必要があります。

都市計画

 地域の条例により、収益用不動産を再建築する際の要件が厳しく設定されている、または再建築が認められないことがあります。老朽化しかけている古い戸建住宅を購入する際は要注意です。