無免許の不動産ブローカーに注意

 ご承知の通り、不動産業を営むためには宅地建物取引業免許を取得しなければなりません。そして宅地建物取引業免許を取得するためには専任の宅地建物取引士を置き、裁判所に供託金を預ける必要があります。

 供託金は、宅地建物取引業協会または全日本不動産協会の会員であれば60万円で済みますが、会員になるためにはかなり高額な入会金および会費が必要です。いずれの会にも入会しない場合は1,000万円の供託金が必要になります。

 宅地建物取引業免許を最初に申請する際には事務所内部および外部の写真が必要です。自宅での開業は、原則として認められていません。どうしても併設する場合は居住部分と事務所部分との間に隔壁を設け、相互に出入りできないようにする必要があります。

 宅地建物取引業免許の取得要件が厳しく、国家資格である宅地建物取引士を置かなければならない(自分が宅地建物取引士資格試験に合格しなければならない)ことから、無免許で不動産を扱う、いわゆる(無免許)不動産ブローカーが暗躍しています。

 無免許で不動産の仲介を行い、媒介報酬を得る行為は宅地建物取引業に反する行為です。発覚した場合には宅地建物取引業法第79条第2号により重い罰則(3年以下の懲役または300万円以下の罰金。併科される場合あり。法人の場合は1億円以下の罰金。)が科されます。

 コンプライアンス重視を掲げる不動産会社が増えていることから、無免許の不動産ブローカーは都心ではかなり少なくなりました。しかし、郊外ではまだ多くの(無免許)不動産ブローカーが存在します。

 知人に「不動産を探している」、「土地を売りたい」などの話をした際に不動産会社ではなく、無免許の不動産ブローカーを紹介されることがあります。また、「家族が自宅となる中古住宅を探している」などの話を、自宅の工事やリフォームをしている際に工務店に話すと「私が対応します」と言われることがあります。

 この工務店が宅地建物取引業の免許を取得していれば何の問題もありません。しかし、免許がなければ無免許の不動産ブローカーです。

無免許の不動産ブローカーを利用してトラブルが発生しても利用者の責任
 仲介手数料を惜しみ、無免許の不動産ブローカーを利用する方がいらっしゃいます。しかし、登記簿の確認を怠る、設定されている担保権の説明を怠る、告知が必要なのに告知しない等の行為が散見されます。

 また、無免許の不動産ブローカーの多くは不動産に関する知識が不十分です。登記簿に抵当権、根抵当権、差押、賃借権、仮登記等の登記がある場合、取引の対象にしてはいけない場合があります。しかし、登記されている権利の内容を知らないために見過ごして契約を成立させ、結果として買主に大損害を被らせることがあります。

 後から重大なトラブルが発生しても、 無免許の不動産ブローカーが責任を負うことはありません。損害賠償を請求したくても無資力であることがほとんどですし、事故が発生した場合の損害保険に加入していない(無免許では保険会社が引き受けないので加入できない)ので、損害賠償に応じてくれることはありません。

 ちなみに、宅地建物取引業の免許を有する不動産会社が起因する取引事故が発生し、不動産会社に帰責性があると認められた場合は、その不動産会社が加盟している不動産保証協会に賠償を求めることができます。さらに、取引事故が発生した場合の保険に不動産会社が加入していれば、その保険から賠償を受けることもできます。

不動産会社における質の良くない営業担当に注意
 質の良くない営業担当が、以下の様な提案をする場合があります。絶対に応じないでください。

・自分は宅地建物取引士である。重要事項説明書および契約書は問題なく作成できる。
・自分が勤める不動産会社を通さないで契約してもらえれば、仲介手数料を大幅に値引きする。

 営業担当の個人が宅地建物取引士である場合でも、宅地建物取引業の免許を所持しているのは勤め先である不動産会社であり、件の営業担当ではありません。このため、この誘いに乗ると実質的に(無免許)不動産ブローカーを利用することになります。

 万が一取引事故が発生しても誰も責任を取りませんし、損害を賠償してくれることもありません。営業担当が上記のような提案をしてきた場合は、その不動産会社とは取引しないことが賢明です。