無免許業者、モグリ業者に注意

業界外の方には意外に知られていないことですが、不動産会社は免許がないと開業できません。不動産の売買、売買仲介、賃貸仲介を行う場合は、宅地建物取引業法が定める宅地建物取引業免許が必要です。

宅地建物取引業法
第一条 この法律は、宅地建物取引業を営む者について免許制度を実施し、その事業に対し必要な規制を行うことにより、その業務の適正な運営と宅地及び建物の取引の公正とを確保するとともに、宅地建物取引業の健全な発達を促進し、もつて購入者等の利益の保護と宅地及び建物の流通の円滑化とを図ることを目的とする。

免許の取得要件ですが、商業登記簿の目的欄に宅地建物取引業を営む旨が記載されていること(法人の場合)、2年以上の実務経験(所定の講習を受講して実務経験に代えることも可)がある宅地建物取引士が専任で常駐している事務所があること、営業開始につき供託がなされていること(1,000万円を供託するか、全国宅地建物取引業協会または全日本不動産協会に入会した上で営業保証金60万円を供託する)、等があります。

つまり、宅地建物取引士の資格を有する者がいないと、不動産業の営業は認められません。ところが、この宅地建物取引業免許を取得していないのに不動産業としての営業活動をしている者が存在します。いわゆる「無免許業者」とか「モグリ」と言われる輩です。

不動産に関する相談事が生じたので知り合いに話をしたところ、無免許業者を紹介されたというのはよくある話です。「不動産についてよく知っている人がいるから紹介してあげる。街中の不動産屋さんよりも知っていると思う。」などと言われ、信用して取引したところ、無免許であったというパターンです。

また、『家のリフォームを工務店に依頼した際に、売却したい土地がある旨の話をしたところ、「こちらで買主を探してあげる」と言われ、実際に客を連れてきた。』という話を私にされた方がいらっしゃいます。
相談された方は、この工務店に不動産の売買仲介を依頼して大丈夫なのかを確認したいとのことでした。私が調べたところ、この工務店は無免許でした。

不動産の購入や売却を工務店に依頼する習慣が残っている地域は、今でもあります。工務店の社員が宅地建物取引士の資格を取得し、これをもって宅地建物取引業免許を取得している工務店が増えています。このような工務店に不動産の仲介等を依頼するのであれば何の問題もありません。
しかし、社員が宅地建物取引士の資格試験に合格できないことから無免許のままで不動産業を営む工務店が散見されます。

無免許業者の多くは、不動産会社において勤務した経験があるにもかかわらず、宅地建物取引士の試験に合格できない者や、過去に何らかの事件を起こして宅地建物取引士の資格を剥奪された者が多いです。

普段は不動産会社に勤務しているにもかかわらず、仲介手数料を狙って無免許業者を営む強者もいます。勤め先は免許を持っているのですが、この社員個人は免許を取得していないので無免許業者、またはモグリと言えます。会社の営業担当として出会ったお客様に対し、「会社を通さないで取引すれば、仲介手数料を少し値引きできます。私は宅地建物取引士の資格がありますから大丈夫です。」等と言って、会社を通さない契約を勧めます。仲介手数料を会社に納めることはなく、全て自分の懐に入れるわけです。
宅地建物取引士の資格を保有していても、免許を取得しているのは会社です。この営業担当が単独で取引に介在したら無免許営業であり、処罰の対象です。

このような者を不動産取引に介在させると、法律や条例の定めにより建物が建てられない土地を住宅用地として売却する、共有者や抵当権などの権利関係を整理しないで話を進める、購入後に土地を測量したら契約書記載面積の半分以下の面積であった等、ろくな事がありません。重要事項説明書や契約書にはいい加減な記載がされていることが大半であり、必要な特約事項も記載せず、最新の法令に準拠していない書式を使用する事が多いです。後で重大なトラブルに巻き込まれ、裁判沙汰になる原因になります。

まともな営業活動を行っている不動産会社であれば、無免許業者には物件情報を提供しません。無免許業者に不動産の売却を依頼しても、その物件情報をレインズやインターネットのポータルサイトに掲載することはできませんので、購入希望者を募る方法は著しく制限されます。

このため、無免許業者に売却を依頼した物件に関する情報は、同類の無免許業者に流れる懸念が大です。免許を取得して営業している不動産会社に持ち込む輩もいますが、無免許業者から依頼を受けた物件に客付けする不動産会社はまともな会社ではありません。いずれにせよ、無免許業者に売却依頼をしても、その物件情報は真面目に営業している不動産会社に届きません。結果として不動産が二重譲渡されるなど、深刻なトラブルに巻き込まれる恐れがあります。

無免許業者の多くは、取引後にトラブルが発生しても責任を取らずに逃げてしまうことが大半です。また、手持ちの資産が少ないことが大半であり、しかも供託をしていないことから損害賠償を請求をしても無意味であることがほとんどです。絶対に利用しないでください。
不動産取引を依頼している相手が無免許業者であることが発覚した場合は、その取引を直ちに中止することをお勧めします。