東京の目黒区における不動産の特性(その2、賃貸物件、土地・戸建住宅)

昨日の続きです。目黒区における不動産の特性について書きます。

4.収益不動産における相互の争いは熾烈、ほとんどの賃貸物件はネットで公開
昨日の投稿に書いた通り、賃料が高額なので、目黒区内にある賃貸物件への入居希望者はそれ程多くありません。コロナ禍によるリモート業務が増加していることもあり、賃料が高額な賃貸物件は次第に敬遠されることが容易に推定できます。

空室が発生した場合、空室が埋まるまでの期間は長期化することが多いです。インターネットを含めた宣伝をしないと入居者はなかなか決まりません。

目黒では、物件を非公開にして入居者希望者を募る方法は通用しません。空室への客付け依頼をされた場合に、非公開としてしまうとその不動産会社はオーナーから出入り禁止にされていまいます。

ほとんどの賃貸物件はネットで公開されており、非公開の賃貸物件はあり得ない地域です。「この物件は非公開です」と言われたら、多くの物件は不動産仲介会社が本音では客付けをしたくない物件です。

同じ建物内にトラブルメーカーがいるために入居者が半年以内に退去してしまう、気象条件により排気ガスが淀むので洗濯物を干せない、平日の騒音が酷い、心理的瑕疵があるのに内緒で仲介することを要請されている等の物件です。大半は、借りてはいけない賃貸物件です。

賃借人からクレームが発生し、仲介業者がトラブルに巻き込まれることが容易に想定できるため、客付けを先延ばしにしている物件が非公開になっています。

5.土地、および中古戸建住宅の売却案件は少ない
5-1.住宅ローンの問題
昨日の投稿に記載したとおり、目黒区の土地に関する固定資産税および都市計画税は高額です。このため、住宅を購入される方の多くは返済期間35年の住宅ローンを利用しています。目黒区内で戸建住宅が多く建設され始めたのは平成10年頃以降であることから、その多くは購入されてから35年を経過していません。転居したい方の多くは、ローン完済後の転居を考えるのが通常です。このため、自宅の買い替えに伴い、土地および中古戸建住宅を売却する案件は非常に少ないです。

5-2.借地が多い
目黒区内は社寺が所有する土地、および大地主が所有する土地が多いです。このため、戸建住宅が建っている土地の権利が所有権ではなく、借地権であることが多いです。

大地主は土地を売却することなく、孫子の世代に引き継がせることを考えているため、土地の売却を持ちかけても断られるのが通常です。

5-3.住環境に満足している方が多い
環境に不満がある場合は転居を考え、それに伴い土地の売却を行うのが通常ですが、目黒区の場合、住環境に満足している方が多いため、転居を考える方はとても少ないです。このため、売地および売戸建住宅はなかなか出ない場所です。

6.戸建住宅を購入すると高額
前述しているとおり、目黒区内の土地価格は高額です。土地を購入して戸建住宅を建設する、または建売の戸建住宅を購入する際にはもう一つの問題があります。目黒区内では、建築物を建てるのに必要な土地の面積が定められているという問題です。

原則として55~80㎡(16.6~24.2坪)未満の広さしかない土地に建物を建設することは認められていません。60㎡未満の土地上への建築を不可としている場所が多いです。

目黒区内の住宅地で一般的なところにおける土地の坪単価は270万円程度ですが、土地の広さ60㎡の場合では約4,900万円になります。これに建物の建設費が加算されます。木造の3階建て4LDKの場合、材料や仕様によりますが、建築費は2,500~3,500万円になります。土地との合計価格は7,400~8,400万円になります。これが土地の面積を最小にして一般的な居宅を建設するために必要な費用となります。

実際には、条例が定める最小面積の土地を買えることは極めて稀です。例えば面積110㎡の土地を二分割して55㎡ずつにすると、条例により建物の建築が認められません。このような土地は分割することなく一括で売却されます。すると、価格はかなり高額になります。

例えば110㎡の土地に戸建住宅を建てる場合、土地価格は8,984万円ですから、建物を建てると1億円を軽く超えます。

7.地元の人が購入する場所ではない
戸建住宅の購入に必要な費用はあまりにも高額であり、もはやサラリーマンが給与だけで購入できる地域ではありません。購入される方の大半は相続した実家を売却し、さらに住宅ローンとを併せて購入される方か、二世代でローンを組まれる方です。

目黒区内の賃貸住宅に長年居住されていた方が一念発起し、目黒区内の戸建住宅を購入するというパターンはとても少ないです。

※明日の投稿に続きます。