東京の目黒区における不動産の特性(その1、標高、賃貸住宅)

2020年の8月末から約100記事を投稿させていただきましたが、多くの記事は不動産、特に収益用不動産に関する法律関係について、不動産会社において実務を行う者の 観点から書きました。

本日から数回になりますが、私の会社がある「東京の目黒」における不動産の特性について書きます。

私は目黒区に50年以上居住しており、目黒区内に不動産会社を立ち上げ、約13年営んでいます。東京の目黒区はもちろん、「城南」と呼ばれる世田谷区、大田区、品川区における不動産の特性については、それなりに理解しているつもりです。

今日は、東京都の目黒区における不動産の特性について書きます。

1.目黒区の標高
不動産業に携わる方以外にはあまり知られていないようですが、山手線の外側にある区の中で、住宅地の地価が最も高額なのは目黒区です。

地価が高い理由ですが、区の大半における標高が高いためであると言われています。区の東部を流れる目黒川近隣の標高は数メートル程度ですが、その他の場所は20~30メートルのところが大半です。標高が高い場所は水害の影響を受けにくいです。万が一、東京湾に津波が押し寄せた場合でも水没する恐れは少ないです。

ちなみに山手線の東側における大半の場所は標高が数メートル未満であり、0メートル以下の場所もあります。この一帯は江戸時代から昭和初期に埋め立てられましたが、戦後の工業化に伴い工業用水として地下水を汲み上げすぎたことから地盤沈下が発生し。標高が低くなったと言われています。都区内の標高は、国土地理院が公開しているデジタル標高地形図を参照願います

東京都区部において、他に標高が高いところは世田谷区、品川区西部、大田区の北側等が該当します。浅間山および富士山が噴火した際の火山灰が蓄積しているためであると言われています。この一帯は「山の手」と呼ばれています。

品川区の東側は東京湾に接しています。また、大田区の南側には多摩川が流れており、標高はそれ程高くありません。

2.目黒区は標高が高いので、賃貸住宅の賃料は高額
標高が高いことから地価が高額です。このため、土地の固定資産税および都市計画税はかなり高額です。

このため、賃貸用の戸建住宅は目黒区内にはほとんど存在しません。賃貸住宅を運営する際にはマンションまたはアパートにしないと賃料が高くなりすぎるために入居者が決まらないのです。

月賃料15万円程度の賃貸戸建住宅を探して欲しいとの要望が時々ありますが、お断りするしかないのが実情です。この価格帯の賃貸戸建住宅はほとんど存在しません。見つかったとしても内部の朽廃がかなり酷いか、心理的瑕疵がある物件になります。

快適性を求めるのであれば、月賃料25万円以上の物件になります。月賃料25万円の場合、世帯年収1,000万円以上でないと入居審査の通過は困難です。

賃貸アパートおよびマンションの月賃料相場は坪当たり11,000~13,000円です。新築、またはペット飼育可の物件では坪1,000円アップになります。

一般的なワンルーム、または1Kの区分マンションを一室借りたいとします。面積20㎡のマンションでは約7~8万円が相場になります。40㎡の2DKでは14~15万円になります。この相場は、山手線の外側では最も高額です。

家賃が高額になる理由は、地価が高いことの他にも理由があります。目黒区内の大半において建物の絶対高さを17m以下にしなければならない旨が条例により定められており、5階を超える高層の建物を建築できないことがその理由です。

例外として高さ制限20~40mの区域がありますが、いずれも駅近、近隣商業区域、国道・都道沿いの一部に限られます。大半は高さ制限17mが適用されるので、5階建以下の建物しか建てられないことになります。

3.収益用不動産の経営には向かない
目黒区は土地の固定資産税および都市計画税が高額であることから、賃料を安く設定して入居者を募るという手法が通用しない場所であると言えます。それに目黒区内の各駅から東急東横線または目黒線に乗車すれば、15~20分程度で川崎市に行けます。川崎市の地価は、武蔵小杉駅の近くを除けば目黒区ほどに高額ではありません。

賃貸物件の相場は目黒区内の物件よりも2~3割程度安いのが通常です。例えば川崎市元住吉で賃料6万円前後の部屋と同じグレードの部屋を目黒区内で借りる場合の賃料は8~9万円になります。目黒区の物件の方が年間で約30万円高くなります。このため、最初は目黒区の賃貸物件を借りたいと思い、ネットなどで検索していた方の多くは最終的に川崎市内の物件に入居されるパターンが増えています。

目黒区内の収益物件における問題は、賃料の滞納が多いことです。あくまでも私の個人的な見解ですが、賃料が安い場合は、賃借人は何とかして家賃の滞納を防ごうとする方が多く、滞納率はそれ程高くならない傾向があります。しかし、賃料が高額な物件の場合、賃借人が「この金額は払えない」と感じ、結果として滞納に繋がっている感があります。

目黒区の賃貸物件における空室率および滞納率の高さは、都区内におけるワースト5に入るものと推定しています。部屋数10室のアパートにおいて、2部屋が空室であり、2部屋が賃料を滞納中というところが多いです。稼働率6割というのは一般的な状況です。

目黒区内で収益物件を運用するのは至難の業であり、不動産投資の初心者が参入する場所ではないと言えます。

※明日の投稿に続きます。