「空き家税」の問題、空き家は「公示」されていません

 昨日の投稿に記載したとおり、「空き家税」を京都市において適用することに総務大臣が同意しました。現時点では2026年から実施される見込みです。

 京都市では住宅が不足しています。別荘や別宅、その他の空き家を売却し、または賃貸住宅への転用を促すことを目的として「空き家税」を導入することを考えたようです。

 大きく懸念するのはこの「空き家税」が全国の地方自治体で採用されることです。

収益用不動産(賃貸住宅)において大問題

 賃貸住宅の入居者が退去した場合、次の入居者が決まるまでは「空き家」になります。どのような場合に「空き家」と見做されて課税されるのかは、現時点ではわかりません。

 空き家の状態が1年以上継続しているとか、元旦または4月1日に空き家である場合等、様々な要件が想定されます。どの要件を採用するかについても様々な議論が展開され、即時に決めることは困難であると思われます。

 さらに問題があります。それは空き家であるか否かを地方自治体が把握する手段が限られ、しかも不完全であることです。

 現在、地方自治体が入居状態を把握する手段は、住宅の所在地に住民票登録があるか否かにより判断する方法に限られます。

 しかし、住民票登録は基本的に自己申告で足りると定めている地方自治体が多数あります。それに賃貸物件の入居開始日に転入届や転出届、転居届が役所に提出されるとは限りません。

 また、賃貸アパートを退去し、新しい物件に転居したにもかかわらず、何らかの理由により役所に届け出ず、放置している方がいらっしゃいます。

 住宅の所在地に住民票登録があるか否かにより判断する方法は不完全であると言えます。現行の住民票登録制度をもって課税対象か否かを判断することには無理があります。

賃借権設定登記しかない?

 不動産の所有権移転では決済日を所有権移転日として登記します。登記事項証明書を参照することにより、所有権移転日は即時にわかります。そこで、不動産売買の場合と同様に、賃借権の設定および解除についても登記を必須とすることが考えられます。

 具体的には賃借権設定登記の利用が考えられます。この場合、入居の際に賃借権の設定登記を行い、退去の際には賃借権の解除登記を行うことを義務づけます。そして不動産登記簿において公示されている情報を基にして「空き家税」を課税するか否かを判断することが考えられます。

 しかし、賃貸住宅における入居及び退去はかなり頻繁に行われます。賃貸住宅において入退去が発生する度に登記が必要になると法務局の事務量が激増し、大混乱に陥ります。すると不動産所有権の移転登記が遅れる等の弊害が生じる恐れがあります。

 そればかりか賃借権設定登記には登録免許税および司法書士手数料が発生します。その費用を誰が負担するのかについて検討しなければなりません。オーナー様、賃借人のいずれか、または双方の負担になりますが、空き家税のために余計な負担を強いられるのは問題です。

 「空き家税」を実現させるためには、入居状態をどのような方法で把握するかという問題があります。