不動産会社を通さずに賃貸借契約を締結したがる方について(オーナー様向け)

 間もなく3月になります。3月中旬を過ぎると入居先となる賃貸物件を探す方が激減します。この時期になっても空室を抱えるオーナー様においては不安になる方が多いです。「最悪の場合、翌年の春まで空室が埋まらないのではないか。家賃が入らなかったらどうしよう。」という不安です。

 確かに4月になっても空室の場合、内見希望者の数が激減することから新たな入居申し込みが入りにくくなります。

 特に3月になると不動産業者を伴わずにオーナー様を訪問し、内見を希望する方がいます。そして内見後、その場で「入居させてください。ただし、不動産会社を通すと仲介手数料が必要になるので、不動産会社を通さずに契約しましょう。大家さんもその方がお得だと思います。」等と提案されることがあります。

 「来年の春まで空室のままだったら困る。」と狼狽し、不動産会社を通さずに契約することを決めてしまうオーナー様がいらっしゃいます。しかし、オーナー様の居所を探し出して内見を申し込み、不動産会社を排除して賃貸借契約を締結したがる方は、他の不動産会社で入居審査を通過出来なかった方が多いので要注意です。

 令和2年4月に施行された改正民法により、連帯保証人になられる方に対して保証債務を履行しなければならなくなった場合における極度額を通知し、賃貸借契約書や連帯保証人引き受け承諾書にその極度額を記載しなければならなくなりました。東京都内における実務では、極度額を家賃および共益費の合計額の2年分としています。

 家賃8万円のアパートの場合、この金額は 8万円×12か月×2年=192万円 になります。かなりの金額になりますので、連帯保証人になろうとする方に極度額を告げると断られることが多いです。

 このため、賃貸保証会社(家賃保証会社)と入居希望者との間で保証契約を締結してもらい、賃貸保証会社(家賃保証会社)が保証契約を引き受けることを承認することをもって入居審査通過と判断する賃貸物件が大半になっています。

 賃貸保証会社(家賃保証会社)が保証契約を引き受けない場合があります。この場合、その原因は家賃が滞納されたことから賃貸保証会社が代位弁済をしたことがある、クレジットカードやカードローンの返済が滞っている等の場合が多いです。その他には年収と家賃とのバランスが良くない等が原因であることがあります。

 明確に言えることは、3月に入ってからオーナー様の居所を探し出して内見を申し込み、不動産会社を排除して賃貸借契約を締結したがる方は、賃貸保証会社が保証契約の引き受けを拒否した方である可能性が高いことです。

 不動産会社を排除しようとする理由は、賃貸保証会社(家賃保証会社)による審査を避けたいからです。「仲介手数料を払いたくないから」というのは、二の次の理由であることが多いです。

 オーナー様において焦る気持ちは理解できますが、不動産会社および賃貸保証会社を利用して適切な入居審査を行い、審査を通過出来ることを入居の条件とすることを強くお勧めします。そのようにしないと家賃の滞納が発生する恐れが高いからです。

 家賃の滞納が発生しても、借地借家法の定めにより直ちに退去を求めることはできません。居座る場合には裁判の提起が必要になりますが、裁判所に提訴するためには滞納が3か月以上継続していることが必要です。さらに強制執行まで行うことが必要になった場合は多額の費用が発生します。

  3月中旬以降に不動産会社を排除して賃貸借契約を締結したがる入居希望者は要注意です。