低所得の子育て世帯に対する子育て世帯生活支援特別給付金について

 各種報道によると、18歳未満の子を養育している低所得の世帯に対し、一律10万円の給付金が支給されることになりました。原則として5万円を現金で支給し、残りの5万円はクーポン券により支給するとのことです。

 クーポン券を発行して支給する場合には印刷、配布(郵送か手渡し)、利用された店舗からのクーポン券回収、利用された店舗への振込送金等の手間が発生します。全額を現金で支給する場合と比較すると967億円もの費用が余計にかかり、さらに地方自治体の職員における事務量が激増するとして、野党が猛烈に批判しています。

 何故全額を現金で給付したがらないのかについてはほとんど報道されていませんので、その理由は推測するしかありません。

 思うに、給付金を受けられる世帯が「低所得」であることがポイントになります。クーポン券の給付を併用する理由は、親が給付金を子育て以外の目的、それもある特定の用途への流用を防止したいからではないかと推察します。

 その「用途」で最大のものは「滞納家賃の支払」です。「給付金10万円の全額を現金で支給すると、滞納家賃の支払いに充当され、子どもの養育費に回らない。このため、5万円はクーポン券にする。」ということではないかと考えられます。

 クーポン券の発行案が提案された背景には「収益用不動産のオーナーは、全て富裕層である。」とする誤った考えの存在が考えられます。オーナー様の全てが富裕層に属するとは言えません。

収益用不動産のオーナーは、富裕層であるとは限らない
 現在、新型コロナウイルス感染症の新たな変異株(オミクロン(株))が登場していますが、日本国内に限定して考えるとコロナ禍は全国的に終息しつつあるのではないかと思われます。

 しかし、コロナ禍の期間が2年にも及んだことから勤め先から賃金カットを受けた、解雇された等の理由により家賃を滞納している方が大勢います。私の会社がある目黒区では総戸数の2割以上において家賃を滞納している1棟アパート、マンションが数多くあります。

 家賃を連帯保証人に請求しても、コロナ禍のために連帯保証人が金銭的に困窮していることがよくあり、滞納家賃の支払に応じてくれない(というか、履行能力が無い)ことがあります。

 困ったことに、家賃の滞納期間が3か月程度では、明け渡し請求の裁判を提起するために訴状を作成しても裁判所の書記官が訴状を受理しないことがあります。

 さらに、家賃保証契約を締結している場合でも、滞納期間が一定の期間を経過した場合には家賃保証を打ち切ることが規定されていることがあります。

 以上の状況なので、賃貸経営が破綻寸前のオーナー様が次第に増えています。特に事業用ローンを金融機関から借り受けて収益用不動産を購入したオーナー様の中には、事業用ローンの返済が滞り、物件の売却を迫られる方が増えています。「収益用不動産のオーナーは全て富裕層である」という考えは、誤りです。

クーポン券の発行は無意味
 給付金が滞納家賃の支払に充当されることを許容するか否かは意見が分かれると思います。

 しかし、給付するのが現金、クーポン券のいずれでも、現金や金券に「色」を付けることはできません。仮にクーポン券を給付しても、金券ショップに持ち込まれることが容易に考えられますし、買い取りを禁止する法令や政令等を定めても秘密裏にこれを買い取り、現金化する業者が必ず現われます。

 クーポンをICカードにおけるポイントとして渡す案もあるとのことですが、家電製品などを購入して買い取り業者に持ち込み、現金化されることが考えられます。

 クーポン券を現金化する手段がある以上、滞納家賃の支払いに流用されることは避けられません。このため、クーポン券の発行は無意味であると考えます。どうしてもクーポン券の発行にこだわるのであれば、その理由を明確に説明するべきであると思います。