賃貸物件における心理的瑕疵(その1:瑕疵の有無に関する整理)
不動産投資におけるリスクの一つは、所有する物件が事故物件になることです。事故物件とは、心理的瑕疵のある物件であり、物件を借りる、または購入する際に心理的抵抗を感じる物件のことをいいます。
事故物件になると、新たに賃貸物件の入居者を募集する際、または売却する際の物件紹介図面に「告知事項あり」と書かなければならなくなります。賃貸物件の場合は賃料を大幅に下げなければ入居者がなかなか決まらない状況になりますので、事故物件が発生することはオーナーにとって死活問題になります。
事故物件において入居者を募集する際は、不動産会社は入居希望者に事故物件であることを告知しなければならないことが宅地建物取引業法により定められています。違反した場合には罰則がありますので、不動産会社は必ず告知することになります。
また、最近は事故物件をまとめたサイト(「大島てる」等)などがあります。事件発生の報道がされた場合にはその情報が必ず掲載されますし、不動産会社が物件紹介図面に「告知事項あり」と記載した物件もチェックされてネットに掲載されます。このため、オーナーが事故物件であることを隠したいと思っても、隠すことはほとんど不可能です。
心理的瑕疵の有無について整理すると、概ね以下の通りになります。
なお、状況によりその物件に「心理的瑕疵」が存在すると言えるかについて明確ではない場合があり、不動産会社において重要事項説明を行う際には大変に気を遣う箇所です。
どのような場合に事故物件とするかのガイドラインを国土交通省で検討するようです。
判例は多数あり、取り上げるとキリがありません。
1.事件・事故・自殺により人が死亡した場合
戸建住宅である場合はその土地及び建物が、賃貸アパートやマンションである場合はその部屋が「心理的瑕疵あり」となります。
1-1.心理的瑕疵ありと見做される場合
・殺人、傷害致死、または自殺により室内、または搬送先の病院で死亡した場合
・アパートまたはマンションの一室に押し入った強盗が住人と格闘になり、負傷した住人が部屋から脱出し、共用部で死亡した場合(居住していた部屋が事故物件になる)
・室内の事故(例えば室内で転倒した際に頭を強打した)が原因で室内、または搬送先の病院で死亡した場合
・アパートまたはマンションの室内で火災が発生して煙を吸い込んだ、または火傷が原因で室内、または搬送先の病院で死亡した場合
・マンションの住人が、自ら居住するマンションの屋上から飛び降り自殺を図り、死亡した場合(居住していた部屋が事故物件になる)
1-2.心理的瑕疵なしと見做される場合
・アパートまたはマンションの一室に押し入った強盗が住人と格闘になり、住人の反撃により強盗犯人が負傷した状態で脱出し、その強盗犯人が共用部で死亡した場合
・マンションの屋上から、そのマンションの住人ではない者が飛び降り自殺を図り、共用部で死亡した場合
・アパート、マンションの建設現場で、工事従事者が事故死した場合(足場から転落など)
2.孤独死または病死が発生した場合
2-1.心理的瑕疵ありと見做される場合
・死後しばらくしてから発見され、御遺体が原因で室内が汚損した場合
2-2.心理的瑕疵なしと見做される場合
・孤独死、病死のいずれでもお亡くなりになられた直後に発見されたが、御遺体の状況が原因となる部屋の汚れが無い場合
テレビのバラエティー番組等では、この場合も事故物件になると説明するものが散見されますが、現時点では事故物件にはならないと考えられます。
室内で御遺体が腐乱した等の状況でなければ、事故物件ではありません。
どのような場合に事故物件とするべきかのガイドラインを国土交通省で検討するようです。新しいガイドラインでは事故物件とされる可能性があります。
・何らかの病気で入院されている方が病院で亡くなった場合
・室内でお亡くなりになられたが、親族に看取られて亡くなった場合(事件性のない場合)
・賃貸アパート・マンションにおける事故物件を第三者が借り受け、その後に退去した場合
判例により、事件後に第三者が一回居住すれば、その後の入居希望者への告知は不要とされます。
あくまでも賃貸の入居希望者に対する場合であり、不動産売買の場合にはあてはまりません。
3.判断が分かれるもの
・事故物件である戸建住宅または賃貸アパートが取り壊され、再建築された新しい建物
事件の重大性に従い、判断することになると思われます。
孤独死や病死の場合は告知不要ですが、自殺や殺人の場合は告知の対象になることが多いです。
・事故物件である建物の取り壊し後に土地が分割された場合の土地および再建築された建物
人が死亡した地点を含む土地の区画は心理的瑕疵ありとされるので告知対象になります。
それ以外の区画は告知しなくても法令違反ではありませんが、告知しないと他の区画の購入者からクレームが発生しますので、告知するのが良いと思われます。
4.原則として「心理的瑕疵」とはならないが、場合により告知する必要があるもの
・問題となる事件が発生したのがかなり前の場合
ただし、事件が数十年前に発生した場合でもその事件が付近住民に広く知られ、現在もその内容が伝わっている場合は「心理的瑕疵あり」とされ、事故物件として告知されることになります。
※明日は、所有する物件が事故物件になることをなるべく避けるための対策について書きます。
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