夏になると増える、困った問い合わせ

夏になると増える問合せ
 梅雨が明け、夏の暑さを感じる時期になると、以下の問い合わせが毎年のようにあります。主にテレビ局の下請けとして活動している制作会社や雑誌記者による問い合わせです。

 内容は「心霊現象を題材としたドラマを制作したいので、戦前に建築された朽廃している家を借りたい」とか「心霊スポットとして紹介したいので、幽霊が出る噂がある建物を紹介して欲しい」という類いの問い合わせです。

 問い合わせをする制作会社や記者の本音は視聴率が上がり、または本が売れれば良いというものでしょう。そして根底では「心霊現象などあるはずがない。存在を主張するのは科学的な知識がない愚か者だ。」という驕った考えがあるとしか思えません。

 このような要望は全てお断りさせていただいています。そのような不動産の所有者がいかに苦悩しているかを知っているからです。

 「取り壊したら何が起きるかわからない」とお考えになり、幽霊が出ると言われる建物をあえて放置している所有者がいます。固定資産税、都市計画税、建物の減価償却費が発生しますが、その不動産から得られる収入は全くありません。それでも意図的に全空の状態で放置している建物が存在します。

 また、心霊スポットとして雑誌に紹介された家の近くにある賃貸アパートから入居者が一斉に退去した例や、近くに心霊スポットが存在することを理由として不動産の査定価格を大幅に下げられたという事案があります。これらの事案に関する相談を受けることがあります。 

「幽霊が出る物件や心霊スポットは、世間に広く公開するべき」とする主張について
 自殺や殺人事件が発生した、いわゆる事故物件を賃貸で貸し出す、または売却する際には「告知義務」があります。事故物件の存在場所を広く紹介しているWEBサイト(大島てる)がありますが、紹介している各々の物件には「事故物件」であると見做される根拠となる具体的な事実が記載されているので、世間一般に広く公開する行為は社会的に正当性があると考えられます。

 しかし、事故物件と見做される根拠となる具体的な事実の存在を確認できない「幽霊が出るという噂がある」という程度の話があるに過ぎない物件は、世間一般に広く知らせる必要はないと考えられます。「幽霊」のように思えても、その多くは科学的に説明可能な現象である可能性が高いからです。

 「幽霊が出るという噂」は、不動産の賃貸借契約や売買契約を締結する際には個別に告知するべきと一応は考えられます。しかし、あくまでも個別に伝えれば足り、世間一般に広く公開する必要はないと思われます。

現代科学では解明できない現象
 守秘義務があるので個別の事案を詳しく紹介できないのですが、毎日数多くの物件を扱っていると、どうしても現代の科学では説明できない不思議な現象や事象に遭遇することがあります。

 都内のある土地における事象です。ある戸建住宅で住人が自殺したことから建物を取り壊して更地にしたところ、今度は隣接する戸建住宅の所有者が建物内で自殺しました。その後、最初の自殺発生現場(現況更地)で焼身自殺が発生しました。何故、自殺が狭いエリア内で続いて発生したのでしょうか。 

 また、全居室のフルリノベーションを行った賃貸マンションにおいて新しい入居者を募集し、満室になったにもかかわらず、「幽霊が出る」という理由により半年で全室が退去した事案があります。全室が半年で空室になったのは明らかに異常です。これも科学的な説明が困難です。

 朽廃した廃屋や心霊スポットに興味を抱くのは個人の自由ですが、私自身は上述した不思議な現象を知っていますし、苦悩している所有者からの相談を受けているので、このような話にはあまり関わりたくないのが本音です。