売主が非公開での売却を希望しているのにネットに公開される物件が増加

 不動産の売却を依頼される際に、売主様より「非公開」での売却を依頼されることがよくあります。その理由はいくつかあります。

 収益用不動産(1棟もののアパート・マンション、区分マンション)の場合、物件情報をネット上に公開すると入居者が不安がり、退去することがあります。このため、収益用不動産の多くは非公開物件として流通しています。

 問題は、居住用(実需用)として使用される土地、中古戸建住宅、区分マンションです。

売主様が不動産業者ではない一般の方である場合、「非公開」を希望する理由は概ね以下の通りです。
・近所に知られることなく黙って引っ越したい
・ネット上の物件情報を見た方がアポイント無く訪問し、価格交渉を始める方がいる。
・隣または正面の家、近所に訪問し、売主について質問する方がいる。
・物件に関する紙資料やタブレット端末を持参し、物件の周囲を歩き回るので困る。

売主が宅地建物取引業者の場合、「非公開」にする理由は概ね以下の通りです。
・売主としてはエンドのお客様(最終的に所有権移転登記を備えるお客様)に直接売却すれば、不動産会社に支払う仲介手数料を節約できる。
・「非公開物件」とすることにより稀少性および優位性をアピールでき、非公開物件だけを探されているお客様の歓心を引くことを期待できる。

※その他にもありますが、割愛します。

 昨日の投稿記事に記載したとおり、特に東京都区内では売り物件の数が極度に不足しています。物件の購入を希望されるお客様から「もっと沢山の物件情報が欲しい」と頼まれるのですが、特に土地や中古戸建住宅についてはここ何年も経験したことがないほどの「玉不足」と言える状況です。

 お客様に紹介できる物件情報がないことは、不動産仲介会社にとっては致命的です。さらにコロナ禍であることから店舗を訪問するお客様が激減しています。このような状況においてお客様を呼び込める手段として、ネット広告しか残されていないと考える不動産会社が増えているのは当然です。

 このため、売主様から「非公開物件にしたいので、ネット上には公開しないでください」と頼まれていても、どこかから入手した物件情報を売主様および元付業者(売主側の不動産会社)の許可を得ることなく、無断でアットホームやSUUMO等のポータルサイトに掲載する不動産会社が増えています。私の会社も、売物件を無断でネット上に掲載される被害を受けたことがあります。

 購入希望者を「非公開」で募ることを依頼された物件がポータルサイトに無断掲載されると、売主様の中には「ネットに公開されているではないか。話が違う。」として媒介契約を取り消されることがあります。売主様および元付業者においては非常に迷惑です。

 「非公開物件として購入希望者を探して欲しい」と依頼されていても、売物件の数がほとんどないことから情報が誰の許可を得ることもなく公開される事案が頻発しています。

 「非公開」を徹底的に貫き、購入希望者を探すことは難しくなりつつあります。この傾向は、コロナ禍が終息するまで続くものと思われます。