いわゆる不良賃借人への対応(オーナー様向け)

 賃貸不動産のオーナー様から、いわゆる不良賃借人に関する相談を受けることがあります。

 多いのは、「賃借人が家賃を滞納し続けている」、「賃借人が行方不明になっている」、「最初に賃貸借契約を締結した方とは異なる方が入居している」、「第三者に転貸されているようである」、「夜中に大声で騒ぐ賃借人がいる」、「ペット飼育不可の部屋でペットが飼育されている」といった内容の相談です。

 賃借人の態様が何であれ、賃借人の態様を原因としてオーナー様が賃借人に退去を求めることが可能なのは、借地借家法が定める「賃貸人および賃借人における相互の信頼関係が破壊されたと認められる場合」でなければなりません。

 そして、「信頼関係が破壊された」と認められるのは、家賃滞納の場合は滞納期間が3か月以上継続していることが要件になります。賃借人が行方不明の場合も、家賃の滞納が3か月以上継続していることが要件になります。

 賃貸保証会社(家賃保証会社)による家賃保証契約が締結されている場合、家賃の支払い請求は賃貸(家賃)保証会社が行い、退去させることについても適確なアドバイスを受けられると思います。賃貸借契約が令和2年4月より後に締結された物件の大半では家賃保証契約が締結されており、オーナー様は賃料の代位弁済を受けられますのでオーナー様が気にすることは少ないと思います。

 しかし、家賃保証契約が締結されていない賃貸物件の場合は、賃貸借契約を解約する旨をオーナー様が賃借人に伝えることになります。

 どうしても退去に応じない場合は明け渡し請求を求める裁判を提起し、最終的には裁判所に強制執行を実行してもらい、退去させます。

 ただし、現在はコロナ禍であることから、家賃滞納の理由がコロナ禍による解雇の場合は、滞納期間が3か月続いた場合でも裁判所書記官の判断により、明け渡し請求の訴状を受け取ってもらえないことがあります。この場合は滞納期間が5か月または6か月以上継続した際に、訴状を改めて提出することになります。

 「最初に賃貸借契約を締結した賃借人とは異なる人が入居している」、「無断で第三者に転貸されている(無断転貸)」という場合は、賃貸借契約書に無断転貸禁止の特約が記載されていれば(通常はこの特約があります)、オーナー側から直ちに契約を解約できます。

 「夜中に大声で騒ぐ賃借人がいる」、「ペット飼育不可の部屋でペットが飼育されている」と行った問題の場合は、オーナー様から賃借人に注意し、改善されない場合は退去を求めることになります。なお、オーナー様に内緒で室内で飼育されていた猛獣や大蛇が脱出して騒ぎになった場合等は、注意することなく直ちに退去を求めることが可能です。

 なお、賃借人に退去を求める際に「これ以上しつこく請求するなら怪我をするぞ」とか「○されたいのか」等と恫喝されるようであれば、警察に相談して差し支えありません。万が一、賃借人の暴行によりオーナー様が怪我をした場合は、退去を求める裁判を有利に進める意味でも刑事告訴をして構わないと考えます。

退去を求める裁判を提起することを考え、事象の発生日時を克明に記録することが重要
 家賃を請求しても支払いに応じない場合は、請求の日時と方法を記録します。退去を求めた際にはその際に告げた内容、賃借人から言われた内容、日時、場所等を克明に記録しておきます。

 相手が粗暴な場合は、ICレコーダーなどで会話を録音することも有効です。裁判では、客観的な証拠が重視されます。