新型コロナ感染者が自宅療養中に亡くなられても事故物件にはなりません

 新型コロナウイルスに感染しても中等症以下の場合は自宅療養にするという政府方針(後で一部撤回)が出されました。

 考えたくないのですが、賃貸物件の入居者が新型コロナウイルスに感染し、中等症未満という理由により自宅療養とされ、療養中に自室でお亡くなりになった場合、「事故物件になってしまう」として心配されているオーナー様が多くいらっしゃるようです。

 また、新型コロナウイルスに感染した入居者が自室で死亡した物件を、その事実を告知されずに借りてしまう、または購入してしまうのではないかと恐れている方がいらっしゃるようです。

日刊ゲンダイの記事から引用します。

※掲載社の都合により元記事が削除され、リンクが切れることがあります。あらかじめ御了承願います。

菅政権“唯一の先手”コロナ対策とネットで揶揄される「事故物件」ガイドラインのゾゾーッ!な中身
公開日:2021/08/07 06:00 更新日:2021/08/07 06:00

 政府が打ち出した、中等症以下の新型コロナウイルス感染者の「原則、自宅療養方針」。8月5日付の朝日新聞デジタルは、「これまで入院できた人が自宅で療養することになり、自宅で亡くなる人が増える可能性がある」などと懸念を示す大阪大の忽那賢志教授のコメントを掲載していた。

 この政府方針が論外なのは言うまでもないが、ネット上で<菅政権の先手策>などと揶揄されているのが、国交省が5月に公表した「宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取り扱いに関するガイドライン(案)」だ。

 同ガイドラインは2月に設置された「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」の議論を踏まえて作成されたもので、おおざっぱに言うと、不動産売買・賃貸をめぐり、過去に他殺、自死、事故死などが発生した、いわゆる「事故物件」の取り扱いに関する指針をまとめたものだ。

 それによると、宅地建物取引業者が買主と借主に告げるべき事案として、他殺、自死、事故死、その他原因が明らかでない死亡が発生したケースが挙げられ、自然死や日常生活の中での不慮の死については原則、告知する必要はない――としているのだが、このガイドラインに従えば、理論上、コロナ感染者が自宅療養中に亡くなっても病死扱いになるため、宅建業者は買主、借主に告知の必要はない。このため、ネット上では<自宅療養のコロナ感染者の死亡増加を見越して菅政権が先手を打った><こういうことだけは早い>などと言われているわけだ。

~以下略~

日刊ゲンダイ

 どのような場合に事故物件と見做すかについては従来より様々な議論があります。

 理由が何であれ、人が室内で亡くなった物件は全て事故物件であるとする見解があります。

 この見解では老衰(自然死)、脳梗塞または心筋梗塞の発症、階段からの落下、食事中に餅を喉に詰まらせたこと、入浴中における心臓発作、熱中症等が原因で病院に搬送され、その後に病院で亡くなった場合も全て事故物件と見做します。

 しかし、このような場合も全て事故物件であるとして「告知義務」があるとしてしまうと、不動産物件の多くが事故物件と見做されることになります。統計データが存在しないのであくまでも私の肌感覚になりますが、この見解に従うと、東京都区内における賃貸物件の1割程度は事故物件に該当するのではないかと思います。

 また人が室内で亡くなった物件は全て事故物件であると定めると、高齢者の入居を拒むオーナー様ばかりになり、どこの賃貸物件にも入居できない高齢者が増えることになります。現在でも、「お年寄りの入居は全て断って欲しい」と不動産会社に依頼するオーナー様が多いので、多数の高齢者をホームレスにしてしまうことにつながります。

 国土交通省が5月に公表した「宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取り扱いに関するガイドライン(案)」は、亡くなられた原因が不慮の事故や病気である場合は事故物件とは見做さないとする見解に立脚しています。

 この見解では、誰の目から見ても異様な死に方をした場合に事故物件と見做します。具体的には殺人、自殺、火災による焼死、死亡してから数日後に発見されたことから室内が汚れた、等の場合に事故物件と見做し、告知対象とします。「病死」や「不慮の事故による死亡」の場合は事故物件とは扱わないため、告知対象にはしません。

 実は、東京都区内における不動産会社の多くは、かなり以前からこの見解に近い考え方を採用しています。そのようにしないと賃貸物件の多くが事故物件ばかりになるからです。

 ちなみに、私の会社における判断基準はこちらを参照願います。室内で発生した不慮の事故により死亡した場合の取り扱いが国土交通省が作成したガイドライン(案)と異なりますが、その他は概ねこのガイドライン(案)に近いです。このガイドライン(案)が正式なガイドラインとして運用された場合には、これに従うことになります。

 もちろん、不慮の事故などで入居者が亡くなられた場合は、オーナー様にお祓いや供養をしてからの入居者募集をお勧めしています。それでも霊感が強い方等からクレームが発生することがあります。その際はその都度対応しているところが大半です。

 東京都内における大半の不動産会社が採用している基準に従うと、自宅療養中にコロナ感染者が自室で病死した場合でも、室内が汚れなければ事故物件にはなりません。

 引用記事に書かれている、「自宅療養のコロナ感染者の死亡増加を見越して菅政権が先手を打った」ということはないと言えます。

 また、「新型コロナウイルスに感染しても中等症以下の場合は自宅療養にする」という方針が社会的に支持されることはないと思うのですが、なぜ唐突にこのような方針が政府から公表されたのか、とても不思議です。