賃貸物件、貸室内に消火器を備えた場合(オーナー様向け)

※昨日投稿した内容の続きです。

 昨日の投稿では、賃貸物件の入居者に消火器を購入させて貸室内に消火器を備えてもらっても、消防法および消防法施行令がオーナー様に求める「消火器の設置義務」を果たしたことにはならない旨を書きました。

 賃貸物件に新たに入居される方に対し、「この物件ではハウスクリーニングが必須です。」等と告げて高額な消臭除菌スプレーを購入させる不動産会社があります。実際にはこれらのスプレーを噴霧しない(「後日噴霧しておきます」等と言いながら噴霧しない)不動産会社が多いようであり、数多く溜まったところで廃棄に困った不動産会社が札幌や六本木でスプレー缶の爆発騒ぎを起こし、多数の重軽傷者を出しています。

 この消臭除菌スプレーと同じ感覚で賃貸物件の入居者に消火器を半ば強制的に売りつける、質の良くない不動産会社が存在するといわれています。

 「入居者に消火器を購入してもらえればオーナー様が消火器を設置する必要はありません。入居者に消火器を購入してもらうことを必須とする特約を賃貸借契約書に入れるのでお願いします。」等とオーナー様に説明し、入居者に家庭用消火器を購入させるわけです。

 不動産会社からこのような説明を受けると、「入居者に消火器を購入、設置してもらえれば消防法および消防法施行令がオーナー様に求める消火器の設置義務を免れる。」と錯覚し、契約書に特約を入れることを承知しがちです。

 特に大都市では賃貸物件に新たに入居する方が減っています。このため、何とか売上げを伸ばしたいと考えるあまり、このような愚策を考えて実行する不動産会社があるのでしょう。嘆かわしい限りです。

 繰り返しますが、賃貸物件の入居者に消火器を購入させて貸室内に消火器を備えたとしても、消防法および消防法施行令が定める「消火器の設置義務」を果たしたことにはなりません。

オーナー様が貸室に消火器を設置しても、消防法および消防法施行令を順守したことにはならない

 オーナー様の中には、自ら費用を負担して消火器を貸室内に設置する方がいらっしゃいます。

 確かに貸室内に消火器を設置することにより、コンロの火が何かに燃え移ったなどの場合に入居者による初期消火に役立ちます。しかし、貸室内に置かれる消火器は安価な家庭用消火器であることが大半で、業務用消火器ではありません。

 それに法令は廊下などの共用部に業務用消火器を設けることを義務づけています。設置方法等についても規定があり、守ることが要請されています。

 オーナー様が貸室内に家庭用消火器を設置しても、それだけでは消防法および消防法施行令が定める消火器の設置義務を果たしたことにはなりません。廊下などの共用部に業務用消火器を設置する必要がありますのでご注意ください。