注文住宅を購入する際には土地、建物のどちらを重視するべきか

戸建住宅の購入を検討する際に、立地を優先するか、建物の内容を優先するべきかという問題に悩む方が多いです。
ハウスメーカーの展示場に行くと、「駅から多少遠くても、大きめの家にした方が快適に暮らせる。立地については妥協し、大きな家を購入するのが良い。」と担当者から言われることが多いようです。

私が指摘したいのは、「立地」および「建物」の優先順位を考えるのではなく、「土地」および「建物」の優先順位を考えるべきではないかということです。「立地」とはロケーションであり、これは「土地」の属性の一部に過ぎません。
「土地」の属性として確認する必要があるのは「土地の面積、地形、ロケーション、前面道路、傾斜の有無、災害警戒区域か否か」です。

土地の面積が広ければ大きい家を建てられるので、快適な家になります。土地の面積が狭ければ、3階建のペンシル状の家にするしかない場合があります。このような建物の場合、例えばトイレに行くだけなのに階段の上り下りが必要である等の不便が生じます。どうしても浴室が狭くなりますので、ゆったりしたバスタブを設けることは出来ません。いわゆるアイランドキッチンやウォークインクローゼットなどを設けることも出来ません。
狭小の土地は隣の建物が近接していることが多く、その多くは陽当たりや風通しが良くありません。家の中が常に暗い上に換気をしにくいのでは、長い間には精神面における問題が生じかねません。

地形についてですが、いわゆる旗竿地と呼ばれる、通路の先に家を建てることになる形の土地は、旗竿の部分を有効に活用できないことが多いので、できれば避けるべきと考えます。
旗竿の部位に車を置く方が多いのですが、道路から建物への出入りがしにくくなります。火災等の際には、車が邪魔で避難しにくくなりますし、消防隊が入れない原因になります。
しかし、車を利用しない、または近隣の貸し駐車場を利用している場合で、旗竿の部分を家庭菜園にする等の有効活用方法を見いだせるのであれば、旗竿地は安く購入できるので検討の価値があります。

不整形地と呼ばれる変則的な形の土地の場合は、土地の面積が広くても狭い建物しか建てられないことがあり、土地を効率的に利用することが困難です。例えば三角形や星形の土地の場合は、土地が広くても小さな建物しか建てられない場合があります。

次にロケーションです。駅から近いことを重視する場合は駅からの距離が問題になります。距離だけではなく、駅から土地までの間に坂道があるかについても調べておく必要があります。特に、高齢者の場合は、長い坂道や急な坂道の上り下りを避けられる、駅からの道が平坦な土地を選ぶべきです。

電車の線路、踏切、高速道路の高架橋、送電線が近くにある場合も注意が必要です。葬祭場、墓についても、これらの存在が気になる方は注意するべき項目です。工場などの騒音やコンクリート工場など嫌悪施設にも注意が必要です。大通りの近くにある土地であれば、車の排気ガスがよどまないか等を調べる必要があります。

前面道路の幅も要確認です。最低でも4mはないと、敷地に車庫を設けることが難しくなります。さらに、前面道路が通学路である場合は、朝の時間帯に車両の通行が禁止されることがあります。
お祭りや地域行事が行われる際、または年末年始に車の通行ができなくなる道路があります。特に神社や寺が近くにある場合は、これも調べておくことをお勧めします。

傾斜地であるか否かも注意が必要です。傾斜地の場合は、擁壁を新しく作り直さないと建物の建築確認申請が認められないことがあります。擁壁を作り直す場合は多額の費用が発生しますし、盛り土をした場合には地盤の強度が弱くなります。建築費を多く要する場合があるので注意が必要です。

災害警戒区域であるかについても確認が必要です。土砂、津波、浸水などのハザードマップは、市町村役場において入手できます。

ここまでに書いた「土地」の性質は、物件の購入後に変更することが出来ません。限られた予算の中で、全てを満足する土地を探すことはなかなか困難かもしれませんが、精力的に探されることをお勧めします。

建物の仕様は、建設地が決定してから決めることで構わないと思います。建築費は建物の面積や構造(鉄筋コンクリートか木造か)、2階建か3階建か、水回り設備の豪華さによります。なお、水回り設備は、建築後何年かしてから交換が必要になることを考えておく必要があります。

注意が必要なのは、海外製の特別なキッチンユニット、バスルームや照明を付けないことです。ヨーロッパ製の特注品である等のセールス文句を利用し、このような設備を勧められることがあります。ハウスメーカーはこれらの設備を取り付けることにより、より大きな利益が出るので勧めるのですが、私はお断りするのが良いと考えます。理由は、こちらのリンク(以前の投稿記事)を参照願います。

ある程度の広さがある土地上の建物は、後でリノベーションを行うことにより快適性を改善することが可能です。このことからも、私は注文住宅の建設には「土地」を重視するべきであると思います。