前面道路が私道である土地や戸建住宅を購入する際の注意事項(その1)

前面道路が私道(いわゆる「二項道路」、建築基準法第42条第2項)である土地を購入(私道の持分あり)した場合、思わぬ制約があることが判明し、購入後に深刻なトラブルに発展することがあります。

今日から何回かに分け、前面道路が私道である土地や戸建住宅を購入する際に注意しなければならないポイントについて書きます。今日は、私道に対する自家用車乗り入れについて書きます。

私道は「道路」
私道の所有者は、前面道路の所有者であることが大半です。分譲地の場合は、分譲会社が所有権を有する事があります。

誰が所有者であれ、私道は「道路」です。持分を有する者であれば歩行することはもちろん、自転車の通行が認められます。

私道に面している土地には、自家用車を乗り入れられない場合がある
しかし、自家用車の場合は異なる扱いを受けることがあります。

土地に車庫を設け、自家用車を道路に乗り入れたいと思った場合に、私道に面する他の住人から自家用車の通行を拒否されることがあります。このような車両通行の拒否が法的に認められるかという問題があります。

庭を自家用車の車庫として利用できると考え、私道に面する戸建住宅を購入した方が自家用車を入庫させようとしたところ、同じ私道に面する住人から「私道への車両乗り入れは認めない」と言われ、裁判になる事案が多くあります。

車両の通行を認めないとする理由
多くは、自家用車が私道を通行すると危険であるというものです。

私道、特に建築基準法第42条第2項が規定する「二項道路」の場合、道幅が4メートル未満であっても建築基準法が「道路」であると認めています。このため、私道の場合は幅員が2メートルしかない道路が多くあります。このような道路では、自家用車のすれ違いが出来ないばかりか、歩行者や自転車との接触事故が発生することが懸念されるので、裁判になった際には「自家用車の通行は不可」とする判決が下されることが多いようです。

また、乗り入れをしようとしている自動車の大きさや台数が問題になることがあります。例えば、私道の奥にある土地の全部を駐車場にし、トラックを何台も乗り入れるような行為は危険であるとして、裁判で争うことになった際には「乗り入れ禁止」が判示される可能性があります。

過去の判例
過去の判例では、幅員3.3メートルの道路の場合に通行不可と判示した判例(東京高判平11.12.16)があります。

しかし、以前に居住していた者が自家用車を継続して乗り入れていた場合や、幅員が4メートル以上ある42条第1項5号道路(位置指定道路)の場合は、接触事故が発生する可能性が低いとして自家用車の通行を認める判例があります。

前面道路が私道である土地や戸建住宅を購入する際には、自家用車の通行が可能かを確認することが必要
大手の不動産仲介会社でも、担当者が経験不足であると気がつかないことがあるようなので、注意する必要があります。