住宅を短期間借りる場合(マンスリー・ウィークリーマンション)

私の会社に、自宅の再建築または大規模リフォームを行うことが決まったことから、賃貸マンション等を半年程度だけ借りたいとの相談がたまにあります。

不動産業者が賃貸仲介で扱う物件は、原則として半年または一年以上継続して借りてもらえることを前提としています。

大半のオーナーは一年以上継続して居住するお客様の入居を期待しており、いわゆる「短期貸し」については敬遠する傾向があります。賃貸期間が短期間の場合、退去後の原状回復およびリフォーム工事の期間における賃料収入を得られませんし、新しい入居者を募集するための仲介手数料や販売手数料が必要になるからです。

稀ですが、短期貸しでも受け入れてくれるオーナーがいらっしゃいます。しかし、賃貸借契約の特約に賃料1~2か月分相当額の(中途解約)違約金を徴収する旨の中途解約条項を設けるか、礼金の増額(賃料の1~2か月分増し)を求めるオーナーが大半です。

また、短期貸しであっても重要事項説明および契約書を作成する作業量は同じであることから、仲介手数料を安くすることは困難です。

結論ですが、いわゆるマンスリーマンションやウィークリーマンションを借りる方が安くなることがほとんどであり、私の会社に問い合わせをされたお客様にはこれらの利用をお勧めしています。しかし、後述するとおり、悩まれる方がいらっしゃいます。

以下、マンスリーマンションおよびウィークリーマンションの良い点と不便な点について書きます。

マンスリーまたはウィークリーマンションの良い点

手続きが簡単
通常は身分証明書を提示し、入居を希望する期間、および入居者の人数を申告し、賃料を前払いするだけで借りられます。予約手続きの完了後、鍵を宅配便等で送付してくれる会社があります。

連帯保証人を立てることは不要であり、家賃保証会社との契約も不要
契約期間における賃料を一括で前払いすることから、連帯保証人を立てる、または家賃保証会社と契約する必要はありません。

仲介手数料、敷金、礼金が不要
宅地建物取引業法に則り、不動産業者が賃貸仲介を行う賃貸物件ではありませんので、これらは不要です。マンスリーおよびウィークリーマンションは、法令上、旅館およびホテルに準じた扱いになります。

多くの場合、電気・ガス・水道料金込みで貸し出される
大半の物件において、電気会社、ガス会社、水道局と個別に契約する必要はありません。

生活に必要な家具や家電製品付きで貸し出される
高級品ではありませんが、家具および家電製品が部屋に搬入された状態で貸し出されます。食堂用テーブル、椅子、ベッド、箪笥、冷蔵庫、洗濯機、テレビ等が付いています。

不便な点
賃料は一括前払いであり、分割払いに応じて貰えない
例えば4か月借りる場合は4か月分の料金を一括で前払いすることを求められます。都区内の物件ではかなり高額になることがあります。

契約期間の途中で退去しても返金を受けられない
予約した期間の途中で退去を申し出ても、利用しなかった期間における料金の返金を受けられないところが多いです。

契約の延長を断られる場合がある
自宅を再建築することからマンスリーマンションに一時的に引っ越し、数ヶ月経ったところで建設会社から工事期間を伸ばして欲しいと言われた場合に、マンスリーマンションの契約期間を延長できるかという問題があります。マンスリーマンションの入居は予約制であることから、入居期間の延長を認めてくれない物件が多いです。

ほとんどの物件において、住民票を移すことが認められていない
従前の住所地に居住していることにするしかありません。

ほとんどの物件において内見不可
大半の物件において事前の内見が出来ません。眺望の良し悪しや間取り、部屋のレイアウトを見た上で借りたいという理由で内見を希望しても、断られることが大半です。

眺望に対する配慮がなされていない物件が多い
隣のビルの壁しか見えない物件など、眺望への配慮がない物件があります。一時貸しの部屋であることから、眺望に関するクレームは発生しにくいことを見越して建築、運用されているのが実態です。

心理的瑕疵に対する告知義務がない
意外に知られていないのですが、マンスリーまたはウィークリーマンションにおいては心理的瑕疵(自殺、不審死等)がある場合でも告知義務がありません。心理的瑕疵のない部屋を希望した場合に応じてもらえるかは、マンスリーまたはウィークリーマンションの運営会社によりまちまちです。

マンスリーまたはウィークリーマンションは、宅地建物取引業法に則り不動産業者が仲介する賃貸住宅ではありません。このため、宅地建物取引業法は適用されず、告知義務は不要とされています。法令上は旅館やホテルに準じた扱いになります。

家具付きが多く、従来使用していた家具の扱いに困る
自宅の建て替えの場合には、新しい住宅の建築後に従来から使用していた家具を運び入れる方がほとんどであると思います。

しかし、マンスリーまたはウィークリーマンションの大半は家具付きで貸し出されます。運営会社により、家具や家電製品なしの物件にしてもらえる場合がありますが、時期や予約状況により、家具・家電製品付きの部屋しかないことがあります。

貸出金額は利用者の人数で決まるので、複数人で利用する場合は割高感がある
不動産業者が宅地建物取引業法に則り賃貸仲介する物件は、居住者の人数で家賃が変わることはありません。

しかし、マンスリーまたはウィークリーマンションでは入居者の人数を申告し、それに見合う金額を支払う必要があり、割高感があります。このあたりは旅館やホテルと同じです。