賃貸物件の更新料および更新事務手数料(普通賃貸借契約、住宅)

2022年5月23日

※お断り(2022年5月23日追記)

 以下の記述は自己居住用アパート、マンションなどの1室を借りる目的で締結される賃貸借契約に適用されますが、土地の賃貸借契約の場合(借地権に関する契約)の場合には該当しない箇所が多くあります。
 また、地域の慣習により大きく異なるので、疑問や質問については物件所在地近くの不動産会社に相談されることをお勧めします。

毎年1~3月は賃貸物件の入居者が増えます。普通賃貸借契約の契約期間は、関東圏では2年、関西圏では1年とされているところが多いです。契約期間は地域によりまちまちです。

契約更新時期が近くなると、オーナーまたは管理会社より賃貸借契約更新のお知らせが届くと思います。通常、そのお知らせの中に更新料および更新事務手数料を請求する旨が記載されています。「これは本当に支払う必要があるのか」と思われる方が多いと思います。

今年の春はコロナ禍であることから、新しい物件に転居される方は例年より少なく、余程の事情がなければ契約更新を選択される方が多くなると思われます。

更新料は支払わなければならないか
更新料は、更新後の契約期間における賃料の一部追加(補完、補充)、一部前払いの意味と契約継続を承諾してくれる貸主に対する礼金の意味とが複合して支払われる金銭であると解されています。

宅地建物取引業法は仲介手数料の上限金額を定めていますが、更新料を定める規定はありません。更新料は物件所在地または管理会社の本社所在地における地域の慣習に従い、金額を定めていることが多いです。

最高裁判例(最判平23.7.15)は、「契約の当事者が、更新料について、支払う旨の明確な合意をし、かつ、その合意の内容、特に借主が貸主に支払う更新料の額が具体的な取引において、客観的に見て暴利的でないなどの合理性がある場合には、その特約は消費者契約法第10条の規定に反しない。」と判示しました。

賃借人が更新時期に更新料の支払をすることが賃貸借契約書に記載されていれば、更新料が著しく高額ではない限り、徴収を認めるという内容です。さらに更新料の金額については1年または2年契約の場合に3か月程度迄であれば適切であると判示しました。

結論ですが、普通賃貸借契約においては賃貸借契約に更新料支払いの特約があり、契約期間が2年の場合に更新料の金額が3か月以下であれば不当な請求ではないことになります。

東京都区内では契約期間を2年とし、更新料を新賃料の1か月分に設定しているところが多いです。この「新賃料」ですが、いわゆる共益費や管理費、水道利用料等を含まない「賃料本体」を基準にします。

都区内でも人気がある物件では、賃料の2か月に設定している物件があります。

更新料を支払わないとどうなるか
上述したとおり、賃貸人から賃借人に対する更新料の請求は、賃貸借契約書に更新料支払いの特約があれば合法です。

この場合に更新料の支払いを拒絶することは借地借家法が定める「賃貸人および賃借人相互における信頼関係を破壊した場合」に該当します。家賃の滞納と同一視されることから退去を迫られる原因になることがあります。

賃貸借契約書に更新料支払いの特約を設けていない場合
この場合、賃貸人は賃借人に対し更新料を請求することは認められません。

賃借人の方が「更新料を支払う必要があるか」について迷われた場合は、賃貸借契約書の記載を確認することをお勧めします。

法定更新の場合は、更新料を支払わなくて済むか
更新前の賃貸借契約における賃貸条件を変更することなく更新する場合は、新しい賃貸借契約書を作成しないことがあります。この場合、賃貸借契約は自動的に更新されます。この更新を「法定更新」と言います。

「法定更新の場合は更新料は不要である」と記載している解説本やWEB記事が散見されますが、誤りです。法定更新の場合でも、賃貸借契約書に更新料支払の特約がある場合は、更新料を支払う必要があります。

更新料を支払わずに放置すると、退去の際に利息を含めた金額をまとめて請求されることがありますので要注意です。

更新事務手数料
更新事務手数料は、更新の際に新しい契約書を作成する手数料として不動産会社が徴収するものです。宅地建物取引業法には更新事務手数料に関する規定は存在せず、金額も規定されていません。

徴収の有無、および金額は不動産会社や管理会社により大きく異なります。郊外の物件でも管理会社の本社が東京都区内にある場合は、東京都区内における慣習に従い徴収するところがあります。

東京都区内の場合、不動産会社が賃貸人および賃借人の双方から徴収します。金額は新賃料0.25か月~1か月分相当額です。

東京都生活文化局消費生活部-東京都消費生活総合センターのWEBサイトには、更新事務手数料は「不動産業者が、貸主から更新手続きを頼まれて契約書の書き換えをする場合には、不動産業者は事務代行を依頼した貸主に手数料を請求するのが筋といえるでしょう。ただし、借主が更新にあたり、不動産業者に家賃の減額交渉や契約条項の変更を依頼した場合などには支払う必要があります。」と記載されています。

東京都の考えは、以下のように解されます。
・事務手数料は賃貸人が支払うべきであり、賃借人が支払う必要はない。
・賃借人が不動産会社に家賃の減額交渉や契約条項の変更を依頼した場合は、賃借人が支払う。

数年後の話になりますが、更新事務手数料を更新料と合算した金額を賃貸人が一旦「更新料」の名目で徴収し、貸主が不動産会社に支払うことが一般的になると予想しています。ただし、借主の要望により家賃の減額交渉や契約条項の変更が生じる場合は借主負担になるものと思われます。

項目現在将来
支払う主体貸主、借主の双方貸主のみ
更新事務料各々が新賃料の0.25か月分(計0.5か月分)新賃料の0.5か月分を貸主が負担
借主の負担はなし
更新料新賃料の1か月分新賃料の1.25か月分
更新事務手数料を賃料の0.25か月分としている場合(東京都区内)の例-家賃や契約条項を変更しない場合、将来の予想