賃貸借契約を短期で解約した場合の仲介手数料および違約金

賃貸仲介は、これから繁忙期に突入します。春は入学、就職、転勤などに伴い、賃貸物件を借りる方が増える季節です。

賃貸仲介にもコロナ禍は影を落としています。賃貸借契約が締結された直後に賃借人が勤める会社から解雇を言い渡された、または賃金カットをされたことから入居せずに契約を解除される方が増えることが想定されます。

なお、売買契約の場合とは異なり、住宅の賃貸借契約では契約締結日にそのまま入居開始になることがほとんどです。

賃貸仲介には「手付金」という概念はありません。問題になるのは「ペナルティー」と言われる違約金と仲介手数料、敷金、礼金、前家賃の扱いです。

違約金
主に敷金0円礼金0円の物件、フリーレント1~2か月の物件において、短期解約の場合に違約金を徴収する旨(特約)が賃貸借契約書に記載されていることがあります。短期間で解約されるとオーナーとしては空室期間が発生しますし、新たに入居希望者を募る際には仲介手数料が必要になるからです。

このような特約がある場合には、違約金を支払う必要があります。東京都区内では、1か月分の家賃相当額(共益費などがある場合はその金額との合計)が定められていることが多いです。

仲介手数料
賃貸借契約が成立している以上、仲介手数料の減額や返金を求めることは出来ません。不動産会社としては賃貸借契約を成立させ、お部屋の鍵を渡すことをもって責務を果たしているからです。

敷金、保証金
関東圏では敷金、関西圏では保証金と呼ぶことが多いようです。
東京都区内の場合、引越前の解約であれば、その旨をオーナーまたは管理会社に伝えることにより全額を返金して貰えるのが通常です。その他の地域では異なる扱いをしていることがあります。

なお、いわゆる「敷引き」の特約がある場合は、敷金または保証金から2割前後を差し引いた金額が返金されます。この場合は賃貸借契約書に記載されています。

礼金
実務上、礼金はオーナーからお部屋を借りたことに対する謝礼とされています。一旦受領した礼金を返還する義務はありませんので返金は受けられません。

前家賃
これは契約締結直後に解約されることを想定して収受されるものです。住宅の場合、解約は1か月(または2か月)前迄に行うことが必要であることが賃貸借契約に規定されていることがほとんどです。

関東圏では最終的な退去日が決まり次第、慣習に従い、日割りによる精算を行います。余剰金が発生した場合はその金額が返金されます。不足額がある場合は不足分を徴収されます。
関西圏では、退去日が決まっても日割りによる精算を行う慣習がありません。このため、返金を受けることは出来ません。