建物の売却、建築確認済証や検査済証を捨てると大損

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 最近、不動産の売物件に関する情報が増えています。売却を希望される理由は様々ですが、相続した物件の売却や資産の組み替えによる案件が多い感があります。

 新型コロナウイルス感染症の蔓延により多くの企業、特に飲食業者が営業時間短縮や長期の休業を迫られました。これらの企業は緊急避難として収益用不動産の購入に走りました。しかし、現在はコロナ禍がほぼ終息したとして収益用不動産を売却し、現金化した上で本業に再投資する動きがあります。

 売主(企業および一般投資家)は当然高値での売却を希望されるのですが、問題になる物件があります。それは検査済証がない物件、および確認検査を終えた後に無届で改築した物件です。

 売主様に検査済証の提示を求めると、「紛失した」、「もらっていない」、「捨てた」等と回答されることがあります。現在、検査済証がない物件、または確認検査後に無届改築した物件は、かなり売却しにくくなっています。買主様が物件の購入を希望しても、多くの金融機関がこれらの物件に対する融資をしたがらなくなっているからです。特に東京、およびその近郊では、このような物件の購入に対する融資が認められにくくなっています。

 施工業者が検査済証を交付していない物件は、設計図書通りに建築されていない恐れがあります。確認検査後に無届で改築する行為は、違法行為に該当することがあります。これらの物件の購入資金を金融機関が融資することは違法行為を助長するとして、融資に応じない金融機関が増えています。

 問題は「紛失した」、「捨てた」という物件です。「役所からコピーを取り寄せれば良い」等と軽く考える方がいらっしゃいます。しかし、一定の保管期間を経過した場合は破棄することを定めている場合がよくあります。役所における保管期間はまちまちです。数年程度で破棄するところがありますが、30年以上保管しているところもあります。また、保管していてもコピーの提供に応じない特定行政庁があります。

 検査済証またはそのコピーを提示できない場合、金融機関から設計図書通りに建築されていないことを疑われます。その結果、購入希望者に対する融資を拒否されることがよくあります。

 ご承知の通り、現在は収益用不動産の利回りがかなり低くなっています。特に東京およびその近郊では収益用不動産の購入に際し、高利のノンバンクを利用することはまず考えられなくなっています。

 検査済証がない場合、融資を利用しないで現金一括で購入できる買主様を探さなければなりません。売却に要する期間はかなり長期化しますし、購入検討者による値引きの要求はかなり大きくなります。

 建築確認に際し役所に提出した書類、検査済証等は必ず受け取り、廃棄しないことを強くお勧めします。