維持費を捻出できない収益用不動産はどうするべきか

 1棟マンションやアパートを購入されたオーナー様から「購入したものの、維持できない。」という相談があります。「勤務先から解雇された等の理由により複数の入居者が退去し、利益が出ない。どうしたらよいか。」という内容が多いです。

 東京都23区内の物件では、満室時における想定表面利回りが3~5%台にしかならないものが大半です。このような物件で複数の入居者が退去すると、赤字で運営しなければならなくなります。

 入居者が退去したら次の入居者を募集することになりますが、それには不動産会社に支払う仲介手数料や広告費などが必要です。クロスが汚れている、または破れている場合は貼り替える必要があります。変色や破れの原因が経年劣化である場合、費用はオーナー様の負担になります。

 エレベーターがある物件では点検費用が発生します。貸室内の給湯器やエアコンが故障した場合の修理費や新品の購入費はオーナー様の負担になります。

 さらに事業用ローンを利用して購入した場合は、毎月の返済額が発生します。

 このような状況なので、特に東京都23区内においてコロナ禍になってから売り出された物件の多くが赤字運営に陥っています。

対策

 満室で黒字運営するためには物件を綺麗な状態で維持する必要がありますが、それだけでは満室にならない物件が増えています。

 原因は、入居希望者の減少とライバルとなる物件の増加です。鉄道の急行停車駅近く等、賃貸物件の入居希望者が多いエリアでは多数の賃貸マンション等が建設されました。正に飽和状態です。

 もちろん、貸室内における故障した設備の入れ替え、建物内外の清掃および管理をしっかり行う事が大前提です。これらを行っても、人気があるエリアにある物件では直ちに満室にできる有効な方法が見つからないことが多いです。

 保有期間の経過により赤字が膨らむ一方の状況では、やがて事業用ローンの返済ができなくなります。ローンの返済が出来なくなると物件が差し押さえられ、任意売却や競売により安く売られ、多額の借金が残ります。

 思うに、事業用ローンの返済が出来なくなるまで保有し続けても、良いことは何もありません。非情かもしれませんが、損切りを覚悟した上で売却することを検討しなければならないことがあります。 

 赤字に陥っている物件は安く売却されても仕方ありません。購入した際の価格以上で売却出来ることは極めて稀です。

 なお、事業用ローンを利用して購入した場合は、減価償却費と借入金の返済額とのバランスを考慮する必要があります。また、物件を安く手放した場合、売却価格がローンの残債に満たないことがあります。早い損切りが必ずしも有利であるとは言えないため、売却の際は慎重な検討が必要です。

 このあたりは個別にお話を良くうかがい、解決策を検討することになります。