相談に応じにくい話(サブリース契約を解約したい場合)

 収益用不動産のオーナー様から、サブリース契約を解約する方法を教えて欲しいという相談を受けることがあります。

 サブリース契約についてはご存じの方が多いと思います。賃貸物件をサブリース事業者が丸ごと借り上げ、入退去や建物の管理もサブリース事業者が行うというものです。空室が発生した場合でも満室時における想定賃料の約8割を支払うことを内容とする契約になっていることが多いです。

 空室が複数発生した場合でもサブリース事業者から8割相当の家賃がオーナー様に支払われます。このため、金融機関の心証が良く、事業用ローンの承認を容易に得られる傾向があります。

 しかし、物件を売却する場合には、8割の家賃をベースとして算出された金額で売却することになります。近隣にある同じ規模の物件より2割程度安く売却することになります。また、設備更新および大規模修繕工事の発注先をサブリース事業者の指定業者に限ることが契約条項に示されていることがあります。

 そしてサブリース業者指定の工事業者における工事価格が相場の5割増、酷い場合は倍以上であることがよくあります。差額は当然サブリース事業者に対するキックバックになります。

 工事費が相場を大きく逸脱していると考え、他の工事業者に発注すると契約違反であるとして多額の違約金を請求されます。

 退去する入居者が増えると、サブリース事業者は顧問弁護士を利用して家賃の値下げを強硬に主張することがあります。すると、大半のオーナー様は借り上げ家賃の値下げに応じがちです。借り上げ家賃を値下げしたことが原因で、物件を購入した際に利用した事業用ローンの返済ができなくなるパターンはとても多いです。

 以上の理由により、「サブリース契約を解約したい」とお考えになるオーナー様はとても多いです。

サブリース契約の解約は困難

 サブリース業者に対しサブリース契約の解約を告げると、ほとんどの場合に違約金を請求されます。金額は契約内容によりまちまちですが、逸失利益の補填部分を含むことから数千万円に達する請求になることがよくあります。

 このため、仕方なく解約を諦める場合が多いです。サブリース事業者は、借地借家法において賃借人として扱われます。このため、借り上げ家賃を継続して滞納している等の事情がなければ、オーナー様からの解約は困難です。

 収益用不動産の購入時に不動産会社や管理会社から「サブリース契約を締結すると管理が楽である。」「退去が発生しても家賃の入金が保証される。」「金融機関の心証が良い。」等と説明されることがあります。しかし、将来において物件の売却を検討するのであれば、サブリース契約の締結を避けることが賢明です。

 また、契約書に工事業者を指定する旨の文言がある場合は、文言の削除を求めることを強くお勧めします。削除に応じない場合は、当該サブリース事業者との契約を避けるべきです。

 不動産において発生するトラブルの多くは契約内容に起因します。最初が肝心であり、契約書の文言を見逃すと、後で大きな損失に繋がることがあります。

 契約書の文言に疑義がある場合は質問し、内容に納得できなければ迷わず協議をお願いするべきです。納得できる説明がなく、修正に応じない場合は契約を締結しないことをお勧めします。