東京および近郊の収益物件、利回りが低くなった理由

 最近、東京都、特に23区内の収益用不動産(1棟マンション、アパート、賃貸用戸建住宅)の利回りが著しく低下しています。銀座では表面利回り約2%という物件が登場しています。山手線の外側でも概ね4~5.5%程度の表面利回りしかない物件が大半になっています。

 コロナ禍になる前は表面利回り8~10%程度の物件が数多くありました。お客様から「23区内、駅近、新耐震、15室以上ある表面7%以上の1棟マンションを探して欲しい。」と依頼されていますが、半年以上、1件も紹介できていません。そのような物件が全く存在しなくなっているからです。

 表面利回り4~5.5%程度の収益用不動産を事業用ローンを利用して購入することはとても困難です。物件価格の半額以上を手持ちの資金で賄えないと、ほぼ確実にマイナス収支になります。

 設備の故障が複数の部屋で同時に発生したり、建物全体を大規模修繕しなければならない状況になると、たちまち運営が破綻します。赤字幅が拡大し、事業用ローンの返済が滞ると任意売却や不動産競売で安く手放すことになります。そして多額の借金が残ります。

 大損害を被るリスクがかなり高いのに、何故このような利回りの低い物件を購入する方が多いのか、とても不思議です。

 東京都23区内およびその近郊の物件における利回りが極限まで低くなった理由は、収益用不動産の購入希望者が激増したことにあります。大きな原因は新型コロナウイルス感染症の蔓延です。

 特に飲食業が大打撃を被り、閉店した店舗が多数あります。そして売上げを出す必要に迫られた多くの企業や投資家が藁をもつかむ気持ちで収益用不動産を買い漁る状況になりました。このため、売主が強気になり、表面利回りを極限迄下げた売り出し価格を設定しました。異様に低利回りになる値付けをしてもドンドン売れる状況になり、都心では2~3%でも売れるという異常事態になりました。

 さらに急激かつ極端な円安が到来しました。外国の投資家からみた場合、円安で日本の不動産のバーゲンセールが始まったように思える状況になりました。このため、外国の投資家が日本の収益用不動産を数多く購入しました。

 東京および近郊の収益物件における利回りが低くなった理由は、かつてない勢いで物件が買い漁られたことにあります。今後、価格や利回りがどのように推移するかは不明ですが、ほぼ確実なことはマイナス収支の物件が増えることです。

 マイナス収支の物件は損切りの対象になり、やがて安く売られると思われます。年単位の時間をかけて物件価格は徐々に下がり、これに伴い利回りは次第に上昇するのではないかと考えています。