中古の収益用1棟マンション、「再建築不可」に注意

※相談事例です。

相談事例

 知り合い(投資家仲間)に購入を勧められたことから1棟ものの収益用賃貸マンションを現金一括で個人売買により購入しました。数年程度保有した後に再建築すれば良いとのことでした。

 5階建の鉄筋コンクリート造で20室あります。建築後、50年以上が経過しており旧耐震です。5階は全ての部屋で雨漏りがします。また、エレベーターがありません。このためか3~5階の部屋における入居者は全て退去しました。1階は入居者専用の駐車場です。現在は2階の2部屋のみ入居しています。

 建物は私道の奥にあります。私道の幅員は2mしかありません。私道の一番奥から先に長さ2m、幅員2mの通路があり、その先に建物が建っています。

 現在の建物を解体し、元の建物と同じ大きさの収益用賃貸マンションを再建築したいと考えています。2階の2部屋における入居者に退去をお願いし、再建築したいと思いますが、御社で対応出来ないでしょうか。

※相談者のプライバシーに配慮し、内容を一部アレンジしています。

 5階の全室で雨漏りがするということは、定期的に行う必要がある屋上の防水塗装(または防水シートの交換)を怠ったためではないかと考えられます。最上階の全室で雨漏りが発生する場合、躯体内部の鉄芯に錆が発生し、膨潤して躯体および梁に亀裂が入っていることが多いです。

 この状況になるまで放置された原因はわかりません。明確に言えるのは、建物の補修は無理に近いことです。

 通常は解体して再建築することを検討します。しかし、この事案では土地の形状が路地状敷地(いわゆる旗竿地)であることが問題になります。通路部分(旗竿地の「竿」の部分)における長さが2mしかない場合でも、旗竿地であることに変わりありません。

 相談者から「長さ2mなので、何とかならないのでしょうか。」と言われましたが、これはどうにもなりません。

 旗竿地でも、戸建住宅の場合は通路部分の幅員が2m以上あれば再建築できます。しかし、収益用マンションでは都道府県または市区町村が定める条例が部屋数や建物の規模を制限しています。さらに、間口の長さが不十分である場合は再建築不可に指定していることがよくあります。

 現地の条例を調査したところ、同じ規模のマンションの再建築には通路部分(旗竿地における「竿」の部分)の幅員が3m以上なければならないとのことでした。通路部分の近くに建物がなければ特定行政庁の建築審査会において許可を得られる可能性があります。しかし、この事案では通路部分の境界付近に隣の建物があります。このため、極めて難しいと思われます。

 相談者には、解体後に個人向けの戸建住宅建設用地として売却するか、賃貸用の戸建住宅を2棟程度建築して運用するしかない旨を伝えました。

不動産会社を通さない個人間売買は危険

 相談者は知人である投資家仲間の助言により、不動産会社を通さずに現金一括でこの物件を購入しました。その結果、大損害を被ることになりました。契約が成立して物件の引渡しを受けた以上、民法上の「錯誤」を主張できなければ、この大損害を甘受するしかありません。

 建物はいずれ解体するしかありません。購入価格は相場を無視した、極めて高い金額でした。

 相談者によると「不動産会社を通して購入すると仲介手数料が必要なので、節約したかった。」とのことでした。何のために不動産会社があり、宅地建物取引業が免許制になっているのかを考えていただきたかったです。