不動産相談をChatGPTで行える日が来るか

 ご承知の方が多いと思いますが、「生産性の向上を図れない企業は今後淘汰される」と言われています。不動産業においては物件の内見をZoom等を利用したリモートや内部撮影動画にて行い、物件の案内を行う営業担当者を削減しようとする動きがあります。

 しかし、個々の物件における紹介動画の作成にはかなりのマンアワーが必要です。また、Zoom等を利用した内見では機器にトラブルが生じがちです。この場合はリモートによる内見を行えないので、営業担当者による機器のサポートが必要になります。

 ところが、営業担当者がサポートしてもお客様の機器および設置環境、ネット回線速度が原因で接続できず、リモートによる内見ができないことがあります。この場合は対面による内見に切り替えるしかありません。

 契約書の締結および決済についても同様です。契約をしようとしたら回線が繋がらず、対面による内見に切り替えることがたまにあります。

 ネットを利用し、非対面で契約を締結する場合はお客様に電子印鑑を用意してもらう必要があります。ところが、お客様の中にはネット環境やPC等の電子機器に関する知識に乏しく、電子印鑑を理解できない方がいらっしゃいます。この場合も対面による契約に切り替えるしかありません。

 現状では内見動画の作成およびZoom等による内見ではお客様の機器に対するサポートが必要です。かなりのマンアワーを割かれるので、リモート化により営業担当者を大きく削減できた等の話はほとんど聞こえてきません。

不動産相談にChatGPTを利用できるか

 不動産会社では、多くの場合にお客様との「相談」を取引前に行います。「相談」をAIにより自動化できれば生産性の向上に大きく貢献します。

 ところが、「相談」にはある程度の知識を備えている者が対応しなければなりません。また、現状ではAIに質問してもAIの回答が全て正しいとは限りません。

 AIに回答を求める場合、その前提としてAIにデータベースが蓄積されていることが必要です。しかし、「相談」についてはデータベースの蓄積が困難です。相談には相談者のプライバシーに関する内容があり、宅地建物取引業法は守秘義務を定めているからです。

 例えばAIに「○○県○○市○○町の土地の市場流通価格を教えてください」と質問した場合は的確に回答されると思います。しかし、「長期間家賃を支払わない賃借人が行方不明になった場合の処理」等の質問には類似のケースに関する判例や学説の紹介しか期待できません。

 相談者が知りたいのは、目の前に現実に発生している出来事に対する対応策です。しかし、AIに質問してもデータベースが不十分なので満足な回答を期待できません。

 現状では、AIによる不動産相談が一般的になるのはかなり先、それも数年以上先ではないかと思います。データベースの蓄積にはかなりの年数を要するからです。