収益用不動産、増改築の誘惑に負けないでください(オーナー様へ)

  1棟ものの賃貸アパートや賃貸マンションを所有していると、建築会社や工務店、リフォーム会社の営業担当が来訪し、部屋の増築や改築、リフォームを勧めてくることがあります。

 多いのは「賃貸マンションの屋上に貸室を増築すれば家賃収入が増えます」とか「マンション1階の庭や車庫を部屋に改造すれば、新たなお部屋として貸し出せるので家賃収入が増えます」等のセールストークを利用した増改築の提案です。

 特にオーナー様が賃貸不動産経営を始めたばかりである場合、これらの提案を安易に受けてしまいがちなので注意が必要です。

違法建築物は、地方自治体(特定行政庁)より取り壊し命令が発令される
 市街化区域の都市計画区域にある建物には建築基準法および地域の条例が定める建ぺい率および容積率が適用されます。これらの値を超える建物を建てる行為は違法であり、建築確認申請を行うことはできません。

 建築確認申請を行わず強引に建物を建築した、または建築確認申請が否認されたにもかかわらず、申請した内容に従い建物を建て、その後に建築した事実が発覚した場合は地方自治体(特定行政庁)より取り壊し命令が発令されます。

建築確認申請および完成検査を行った後に違法増改築をした場合
 増改築により指定建ぺい率または指定容積率を超えた場合、法律上は違法建築物になりますが、地方自治体(特定行政庁)より増築部分の取り壊し命令が発令されることは少ないようです。

 しかし、安心するのは禁物です。地方自治体において予告なく「違法建築物撲滅キャンペーン」等が始まり、一斉に摘発され、取り壊し命令が発令されることがあるからです。

違法に増改築した建物に対する融資は付かない
 違法に増改築された箇所がある収益用不動産の購入に対する事業用ローンの利用は、大半の金融機関において否認されます。ノンバンクであれば融資に応じてくれるところがありますが、返済利率が高すぎます。年10%を超える利率を提案されることがあり、実質的に利用できません。

 違法に増改築した建物を売却したいと思っても、大半の金融機関において、そのままでは融資が付かないのが現状です。購入できるのは全額を現金一括で支払える方に限られるので、売却には長期間を要しますし、値引きの要求も大きくなりがちです。

 「賃貸マンションの屋上に貸室を増築すれば家賃収入が増えます」とか「マンション1階の庭や車庫を部屋に改造すれば、新たなお部屋として貸し出せるので家賃収入が増えます」等のセールストークを利用した増改築の提案をされても、誘惑に負けないことをお勧めします。

※12月20日12時追記
 「関西では車庫を部屋に改造することは日常的に行われており、いちいち詮索することはおかしい。」との意見が寄せられていますが、本ブログは東京都内における慣習に基づき記載しています。

 飲酒運転およびあおり運転に対する行政の対応は短期間に急変しました。違法建築に対する認識が甘い地方自治体があることは承知していますが、そのような地方自治体でも政府、都道府県、国土交通省等が指示した際には予告なく突然対応を変え、摘発を始めることがあります。

 「行政からは今まで何年もの間、何も言われなかった。」と弁明しても、「法律に違反した建物を建てた貴方が悪い。すぐに取り壊してください。」と言われて終わりです。くれぐれもご注意ください。