収益用不動産を購入する際の注意点(その9、物件に関する注意点)

標題の投稿は今日で9回目になります。明日からは別の内容について投稿します。

収益用不動産を購入したいと思われる動機は様々であり、物件から受ける印象も人により大きく異なりますのでお勧めの物件を安易に書くことは差し控えたいと思います。このため、「私はこのような物件を選ばない。」とい観点で述べることにします。

1.駅から遠いのに駐車場を確保していない物件

東京都区内の場合、賃貸需要の多くは最寄り駅から徒歩5分以内の物件に集中します。10分を超える物件は、ほとんど人気がありません。郊外の場合は、徒歩15分以内の物件を希望されるお客様が多いです。

駅から離れた場所の賃貸物件では、駐車場を利用できることが必須だと考えます。どこに行く場合でも車の利用が欠かせない地域では、駐車場のない住宅は考えられません。全室20室の物件であれば、20台分の駐車場の確保が必須です。

敷地内であれば最適ですが、物件の近くに駐車場として利用できる土地を確保できれば構わないと思います。ただし、土地の所有者がオーナーではなく、近い将来に建物を建設する可能性がある土地の場合は要注意です。建物の建築を理由として駐車場の賃貸借契約を解除された場合、居住者の車をどこに置くかが問題になります。新たな駐車場が見つからない場合、退去してしまう恐れがあります。

2.3~4階建でエレベーターがある物件

エレベーターの維持コストは莫大です。月1回以上の定期点検は欠かせませんし、10年以上を経過した場合には大規模な修繕をする必要があります。建物の階数にもよりますが、建築後20年以上が経過し、昇降機自体の入れ替えが必要な場合、1,000~2,000万円以上を要します。エレベーター付きの物件は人気があるために住人が退去しても次の入居者が決まりやすいという利点があります。しかし、採算面ではかなり問題です。

3.エレベーターがない5階建の物件

エレベーターがない建物の5階にある部屋を賃貸募集した場合、入居希望者がなかなか見つからないことが多いです。入居してくれる方は体力がある若者に限定されますし、賃料は4階以下の部屋より安く設定することが必要になることが多いので、投資効率の面で劣ります。

4.同じ建物内に心理的瑕疵ありの部屋が2部屋以上ある物件

敬遠される方が多いので、相当に賃料を下げないと入居者が決まりません。

5.雨漏りが放置されている物件

最上階の廊下や居室内に雨染みができている物件は要注意です。陸屋根(ろくやね)の建物の場合は、屋上の防水シートを貼りかえれば雨漏りしなくなることが多いです。瓦葺きのアパートの場合は、屋根瓦の修理で雨漏りが止まることが多いです。
木造の建物の場合、雨漏りの長期間放置は木材の腐食やシロアリ発生の原因になります。RCやSRC造りの建物の場合は、鉄筋の微少な割れ目より水が浸入した場合に鉄筋の腐食を招き、強度が低下する原因になります。

6.眺望が著しく劣る物件

眺望の全てが隣の建物の壁である物件や、墓やいわゆる嫌悪施設が目に付く物件です。

7.排気ガスなどがよどみやすい物件

大通りの谷間にある物件です。無風の際に、車の排気ガスが谷間に溜まります。臭いだけではなく、煤煙が漂うため、洗濯物を屋外に干すと真っ黒になります。このような賃貸物件の場合、契約期間である2年を待たずに解約される方が多く、空室期間が長くなりがちです。

8.鉄道線路や踏切に近い物件

騒音や振動が酷く、夜も眠れない物件は総じて不人気です。踏切の警報器は、その存在を見落としがちですのでご注意ください。(一部の鉄道マニアには極楽かもしれませんが...)

9.騒音や臭いを発生する工場などが近くにある物件

工場等の近く等では、騒音や薬品臭が酷いところがあります。工場には大型車が出入りすることがあり、交通事故に遭遇する可能性もそれなりにあります。

10.隣地との境界が不明瞭である等、敷地に関するトラブルがある物件

都市計画区域内では境界が確定していないと建築確認申請が出来ないため、建物の再建築ができません。境界トラブルがある物件は売却の際に支障を来します。

11.建物の壁や陸屋根に大きな亀裂がある物件(RC、SRC造りの場合)

鉄筋が腐食している可能性が高く、建物の強度が大きく低下している恐れがあります。

12.無届建築物、違反建築物

無届建築物の場合、行政側から建物の取り壊し命令が発せられる危険性が常にあります。特に建築不可の土地である場合、再建築が認められることはありません。収益用不動産として購入したのにもかかわらず、突然、無価値になる可能性があります。
このような物件では「同様の違法建築物が多くあるので、取り壊しが命令されることはほとんどない。」という内容のセールストークをされる場合もあります。しかし、何らかの事件(無届建築物の大火災等)が発生した際には、これをきっかけに行政側が一斉に動く恐れがあります。突然、無価値になる可能性がありますので、購入対象にするべきではありません。

13.家賃の滞納者が多い物件

賃料を滞納する賃借人に退去を申し入れても退去に応じない場合に問題となります。最終的には法的手続きによる退去を迫ることになりますが、退去までにかなりの日数と費用がかかります。長期滞納者が多い物件は、価格を安くすると言われた場合でも避けるのが賢明です。