購入した古家付の土地において、建物の下に井戸を発見した場合

 建物を新築する目的で土地を購入する際に、古家付きの物件を紹介されることがあります。主に不動産業者ではない一般の方が売却する物件において、このような状態で売られることがあります。

 購入された方は古家付きの物件を購入後に古家を取り壊し、更地にしてから新築の建物を建築することになります。原則として取り壊し費用は買主の負担になりますが、購入価格より解体費用の一部が値引きされることが多いです。

 このような古家付きの土地を購入した後に建物を取り壊すと、古井戸が発見されることがたまにあります。この場合の対応について相談を受けることがあります。

 古井戸を埋める際には神主によるお祓いを手厚く行うべきとの言い伝えがある地域が数多くあります。しかし、古井戸があること自体は、いわゆる心理的瑕疵には該当しません。

 長年使用されていない古井戸の場合、石や砂で埋められ、上部のフタに管を通していることが多いです。井戸を完全に撤去することは困難であり、通常はこの状態を変えることなく建物を建てることになります。管を通すのは、微量のガスが井戸から発生するからです。

 後述しますが、井戸があるということは付近の地盤強度が弱いことがよくあります。特に井戸水が涸れていない井戸の近くでは地盤強度が弱いことが多いので要注意です。

 古井戸の撤去は困難であり、古井戸がある部分に建物の柱を設けることは物理的に出来ません。建築可能な建物の構造に一定の制限が生じることになります。

 このため、古井戸の存在を売主が知っている場合は、買主に対し古井戸の存在に関する告知義務があると解されます。古井戸があると建築可能な建物に制約があり、杭打ちが必要になることがあるなど、買主が不測の損害を被る場合があります。売主が古井戸の存在を知りながら告知せずに売却した場合、買主から損害賠償を請求される恐れがあります。

 井戸があることは、地下水の水位が地表に近いことを示します。このため、地盤が軟弱であることがよくあります。長年の間に地盤沈下を起こすことがあり、建物が不等沈下して傾く原因になります。大地震が発生した際には土地が液状化し、建物が大きく壊れる恐れがあります。

 古家を取り壊した後に古井戸が現れた場合は、地盤調査を行うことをお勧めします。売買契約時の特約として、古井戸が現れた際における地盤調査の費用を売主負担にすること、建物を建築する際に杭打ちが必要なことが判明した場合にはその費用を誰が負担するかについてあらかじめ決めておくことをお勧めします。

 さらに、建築した建物が不等沈下を起こしたなどの場合は、売主は契約不適合責任を負うことを定めておくことも有効です。

 売買契約書の特約をどのように定めるべきかは建物の種類や構造により異なります。これについては不動産会社の宅地建物取引士に一任することをお勧めします。