賃貸物件と特殊詐欺(オーナー様向け)

都区内ではほぼ毎日、警察のパトカーや自治体の車が「特殊詐欺に注意してください」とアナウンスしています。特殊詐欺にはいわゆるオレオレ詐欺のような古典的な手口がありますが、訪問してキャッシュカードを騙し取り、現金を引き出す手口や架空請求詐欺、還付金詐欺などがあります。

ほとんどの事件において携帯電話が利用されています。犯行は、掛け子、出し子、受け子の三者が連携し、組織的に行います。

特殊詐欺の犯罪拠点として、賃貸住宅が利用される
犯罪集団は、「掛け子」の活動拠点として利用する目的で賃貸住宅を借ります。また、「受け子」の活動拠点として空室の賃貸物件を利用します。

ご承知の通り、「掛け子」は携帯電話で電話を掛けまくります。犯罪集団はやや広めの賃貸住宅を借り、大勢で電話を掛けまくります。かなり家賃が高額な物件でも平然として借りる事が多いようです。

狙われるのは管理人が常駐しておらず、防犯カメラ非設置かつ外階段を利用できる駅近の物件です。犯罪集団は、他の入居者との接触を避けたがります。エレベーターを利用すると、どうしても他室の居住者と接触しますので、エレベーターを利用せずに外階段を利用します。

仲介を行う不動産会社では賃貸物件が犯罪拠点に利用されることを防止するために、入居審査の際には十分に注意します。しかし、賃借を希望するのは詐欺師グループなので、騙されて貸してしまうことがあるようです。

犯罪拠点とする部屋を借りる一般的な手口
一見するとひ弱そうな若いカップル等が、グレードが高い賃貸物件を借りたいとして不動産会社に現れます。物件の内見後に入居申込書を提出し、偽造した源泉徴収票および就業証明書を提示します。

知り合いの実業家夫婦に連帯保証人の引き受けをお願いするとして、この実業家の収入証明(源泉徴収票)のコピー、偽造した印鑑証明および連帯保証人引き受け承諾書を提出します。家賃保証会社との保証契約締結は拒むことが多いようです。

賃貸借契約の成立後、入居するのは件の若いカップルではなく、得体の知れない「掛け子」の集団です。

他の手口もありますので、注意が必要です。

掛け子集団が利用する部屋の特徴
洗濯物を室外に干さないなど、生活感が見られません。

昼夜を問わず窓とカーテンとを閉め切っていることから、内部の様子がわかりません。さらに室内の声が外部に漏れないようにしています。特に共有部である廊下側に窓がある場合は、窓に目張りをしていることがあります。

他室の居住者との接触を極力避けるように行動します。エレベーターを使わず、階段を利用することが多いです。

入居の防止策
入居を完全に防止するのは難しいと思います。管理人が常駐しておらず、かつ防犯カメラが無いのに賃料が高額な物件は借りる方が少ないので、オーナーおよび仲介する不動産会社は入居させるように前向きに働きかけてしまう傾向があります。

このため、賃貸借契約書の特約として特殊詐欺などの犯罪に利用された場合には、賃貸借契約は直ちに解約される等の条項を設けることが重要です。

このような条項を設けて賃貸借契約を解約できた場合でも、特殊詐欺の活動拠点として利用され、摘発された場合に退去させるにはかなりの手間と日時を要します。可能な限り、入居を防ぐことが肝要です。

「受け子」は空室をどのように利用するか
オートロック設備がない賃貸物件は、「受け子」の犯罪拠点として利用される恐れがあります。
犯人は現況空室の賃貸物件をネット等で探して訪問し、部屋の鍵を探します。空室の場合、鍵を郵便受けに置いてあることが多いので、郵便受けを開けて部屋の鍵を取り出します。被害者から配達の日時を予め聞き出し、部屋の鍵を利用して部屋に立ち入り、現金の入った封筒や小包等を宅配便で受け取ります。配達時間帯は室内で待機します。

郵便受けに部屋の鍵がない場合は、キーボックスを探して解錠を試みることがあります。キーボックスが見当たらない、またはキーボックスを解錠できない場合は玄関前に待機し、宅配業者等が訪問した際に玄関で受け取ります。この他にも部屋の前に簡易型の宅配ボックスを置くなどの手口があるようです。

「受け子」に利用されないために
空室の際は、見回りを頻度高く行うことをお勧めします。室内に誰かがいる場合、不動産会社が次の入居者を募集するために内見目的でお客様をお連れしていることがあります。しかし、不動産会社に入居者募集を依頼していないのに誰かがいるとか、不動産会社の社員を伴わない侵入者がいる、様子がおかしいと感じた場合には迷わず警察に通報することをお勧めします。

施錠できない郵便受けに部屋の鍵を置くことは、現況が空室の場合でも危険です。次の入居者を募集してもらう不動産会社に預けるか、不動産会社にキーボックスを設置してもらうことを強くお勧めします。