不動産一括査定サイトの闇

2021年6月18日

昨年9月に不動産の一括査定サイトの査定結果は信用できない旨を投稿しました。本日の投稿は、注意喚起の意味で、一括査定サイトに関する内容を再び書きます。以前の投稿と重なる部分がありますが、御了承ください。

最近では大手の不動産会社に限定して査定させるという、新たな手法を用いた一括査定サイトが登場しています。

これらのサイトは大手不動産会社による査定であるから信用できるだろうということで、査定を安易に申し込まれる方が多いようです。しかし、安易な気持ちで査定を依頼することは危険です。

大手の不動産会社における営業担当は例外なくノルマを課せられています。不動産の売却を検討しているお客様は例外なくなるべく高い価格で売りたいと思っています。その心理につけ込み、市場価格の3~4割増しの価格を提示し、販売活動を自社に依頼するように仕向けます。

「一括査定サイトで査定したところ、一番高い価格をつけたのは大手の○○不動産で○○万円。この価格以上で売却したい。」という相談がよくあります。しかし、その価格は市場価格から大幅に乖離しており、その価格で売れることはありません。

あるお客様から御自宅の売却依頼がありました。現地を訪問し、地形や土地に係る各種規制等を調査した上で市場価格を提示ました。お客様は「一括査定サイトで大手の○○不動産が提示した価格は○○万円。大手だから間違いない。あなたの査定価格は大手が提示した価格の4分の3ではないか。その査定はおかしい。買い叩こうとしているのか。馬鹿にするな。」等の罵詈雑言を吐かれ、「二度と来ないでくれ。」と言われました。

その後、このお客様は一括査定サイトで最も高額な査定をした大手の○○不動産会社に売却を依頼しました。ところがなかなか売却出来ず、1年後に建売住宅業者が買付けました。推定される買付価格は市場流通価格の8割程度です。

この方は「大手不動産会社であれば絶対に信用できる。」と信じたことから1年という時間を無駄にし、相場の8割で手放すことになりました。この不動産会社は販売活動をほとんど行わず、他の不動産会社から問合せがあっても「お話が入っています」とか「契約済です」等と言い、断り続けたものと思われます。いわゆる「塩漬け」にされてしまったのです。

そして「なかなか売れませんので価格を下げましょう」と何回も言われ、その後は少しずつ価格を下げたのでしょう。売却活動を開始してから1年後に市場価格の8割程度の価格で売却することを承諾させ、建売住宅業者を紹介したのです。

市場価格の3~4割増しの価格で売り出しても、誰も買おうとは思いません。価格を少しずつ下げ、相場より2割くらい下げることができた時点で建売住宅業者等の買い取り業者に紹介し、両手取引として仲介手数料を多く稼ぐ手法はよくあります。

一般の販売ルートに載せた場合、客付け会社が入ることが多いので手数料は物件価格の3%に6万円を加算した金額になります。

5,000万円の土地を例として考えます。
・市場価格の3割増しである6,500万円で売却出来た場合の仲介手数料は201万円(税別)です。
 しかし、3割増しの6,500万円で売れることは、ほぼありません。
・市場価格の8割である4,000万円で建売住宅業者に売却した場合の仲介手数料は246万円(税別)です。
 買い取りを希望する建売住宅業者は沢山ありますので、直ぐに買い手が付きます。

以上の理由により、価格を下げさせて両手取引にした方が不動産会社は多くの利益を得られますし、直ぐに売れることがわかります。

一括査定サイトを利用しなければ、1年も待たずに市場流通価格で売れたと思われます。

また、一括査定サイトを利用すると、いわゆる内緒の売却が出来なくなります。
詳細は、昨年11月の投稿を参照願います。

不動産会社の営業担当から電話・メール攻勢がありますし、当然ですが複数の会社の営業担当による訪問を受けることになります。

一括査定サイトに「訪問はしません」と書いてあっても信用してはいけません。大手の不動産会社でも営業担当は厳しいノルマを課せられています。郊外の物件を除き、予告しない突然の訪問は必ずあります。

また、一括査定サイトを利用した方の個人情報が売られています。私の会社にも、有料で一覧表を送るので購入しないかとのお誘いがありました。当然お断りしています。

サイト名および会社名は申し上げられませんが、テレビCMやネット広告等で派手に宣伝しているところです。

お考えは十人十色でしょうが、現状の不動産一括査定サイトは社会悪になりつつあります。「禁止するべき」とは申しませんが、査定方法等の基準を設けるべきです。また、利用者の個人情報を売買する行為は禁止するべきと思います。