収益用不動産の買い時はいつか

収益用不動産の購入を検討されている方から、コロナ禍という現状における買い時に関する質問を受けます。

現在、売却が難しい収益物件は、以下の通りです。

●賃料を滞納している部屋がある物件
●飲食店、特に居酒屋やパブ、クラブ等の酒類を提供する店舗が入居している物件
●マッサージ店が入居している物件

ご承知の通り、コロナ禍により賃料の滞納事案が急増しています。問題なのは、企業の倒産、失業、賃金カットが続いていることから、賃料の滞納はこれからも間違いなく増えます。

酒類を提供する飲食店は、営業時間短縮の要請があること、および客数の大幅減少により経営状況が悪化していることは周知の事実です。テイクアウトを行っている店がありますが、テイクアウトで得られる利益だけでは店舗の賃料を支払えないことは自明です。

マッサージ店は、人と人とが接触することを前提とした営業スタイルであることから来店客の数が激減しています。

住居、店舗を問わず、賃料が滞納されるとその間の家賃収入が入らないことがあります。家賃保証会社に保証させている場合には代位弁済としてオーナーは賃料相当額を受け取れますが、最終的には退去を迫る必要があります。

困ったことに、裁判により退去させるとしても2020年4月の緊急事態宣言をきっかけとした裁判手続きの遅れが現在も続いており、明け渡し請求の裁判および強制執行を行うのにかなりの日数を要します。コロナ禍になる前は裁判所に訴状を提出してから3~5か月前後で強制執行まで行えることが多かったのですが、現在は1年近くかかることがあります。

最終的に明け渡されたとしても、飲食テナントの場合には莫大な原状回復費用が発生します。厨房設備およびカウンターの撤去と廃棄、什器備品の廃棄、場合によりスケルトンの状態にし、室内クリーニングをすることが必要です。10坪程度の店舗であっても100万円を超える費用が発生することが通常です。やや広い店舗の場合には500万円を超えることがあります。これらの費用は保証金から差し引くことになりますが、不足する金額は賃貸物件のオーナーが負担しなければならないのが実情です。

収益物件をこれから購入したいとお考えの方は、酒類を出す飲食店・マッサージ店付の物件については新型コロナウイルスの感染状況が収束するまでは購入を控えるのが賢明であると思います。

居住用住居のみの、いわゆるレジデンスの場合は入居者のプロフィールをよく確認することが必要です。一番困るのは滞納した後に遅れて賃料を支払う賃借人が入居している物件です。2か月分の賃料を滞納し、翌月に1か月分のみを後払いとして支払う等をされると、裁判で退去を迫る場合に困ります。

借地借家法が定める「賃貸人および賃借人相互の信頼関係が破壊された場合」に該当すると見做されないことがあり、裁判所が明け渡し請求を認めないことがあります。このような賃借人が入居している物件は、購入を控えるのが賢明です。

結論になりますが、コロナ禍の収束が明らかになり始めた頃が買い時になると思います。コロナ禍が完全に収束した後は経済が回復し、収益用不動産の物件価格は少しずつ上昇すると思われます。