入居中のテナントが倒産・廃業した際に、オーナーが執るべき対応(その2)

前回の投稿では、裁判所が破産手続開始決定の判断を下す前にテナント退去に向けた対応をするべきである旨を書きました。本日は、テナントが廃業または倒産した場合に、オーナーが注意しなければならないことを書きます。

店舗内の備品や商品を持ち出す輩がいる
テナントの廃業や倒産により、損害を被るのは店舗を貸しているオーナーだけではありません。飲食店であれば食材の納入業者や店舗物品のリース会社などです。

「テナントから代金を支払って貰えないなら備品や商品を持ち出そう」ということでテナント店舗に立ち入り、備品や商品を強引に搬出しようとする債権者がいます。

このような輩が、オーナーに「店舗の鍵を開けて欲しい」と頼むことがあります。「自分はテナント運営法人の役員である」とか、「弁護士事務所の職員である」、「テナント運営法人の従業員である」、「私物を置き忘れた」等を言うことがあります。ほとんどは嘘なので、相手にしてはいけません。絶対に鍵を開けたり渡してはいけません。

それでもなお強引に鍵を開ける、または鍵を渡すことを迫られ、脅迫や暴力を受けた場合は迷わず警察に相談することをお勧めします。

破産管財人が店舗を閉鎖している際に内部に侵入し、中の物品を持ち出す行為は破産法に違反します。うっかり店舗の鍵を開ける、鍵を渡すなどの行為を行うと、かかる行為を手助けしたとされ、オーナーも処罰の対象になることがあります。

なお。都心の大型商業施設内にあるテナントの場合は、破産管財人の権限により店内の全ての物品を搬出し、破産管財人が指定する倉庫に移動させることがあります。大型商業施設では店舗の一つのみを閉鎖することが物理的に難しいことがあり、債権者が備品や商品を容易に持ち出せると考えられる場合にこの措置が執られます。

オーナーが預かっている保証金から支払を求める輩がいる
「オーナーが預かっている保証金または敷金はテナントの運営者が預けた金銭であり、いずれはテナント運営者に返還される金銭であるから、債権者は保証金から支払を受けられるはずである。」として、オーナーの自宅や勤め先に押しかけ、強引に支払を求める輩がいます。

このような要求をされる方には破産手続きを全く理解していない方、および理解しているのに「確信犯」として支払を求める方の両方がいます。どちらであっても、このような要求は断るしかありません。

「保証金から滞納賃料及び原状回復費を控除します。控除するとマイナスなので、お支払できるものはありません。」と告げるべきです。ほとんどの場合に、マイナスになると思われます。

ちなみにプラスになった場合は、その金額を破産管財人に渡すことになります。破産管財人は破産者の資産として扱います。これは債権者全員で分配するべき破産債権であり、特定の債権者が独り占めできるものではありません。

脅迫や暴力を受けた場合は、迷わず警察に通報することをお勧めします。

賃貸借契約の解約が確定するまで、オーナーが行えることはほとんどない
破産管財人が選任された場合、賃貸借契約を解約するか否かの判断は破産管財人が行います。ほとんどの場合、最終的に賃貸借契約を解約すると思います。しかし、その時期を何時にするかは破産管財人の裁量に委ねられています。もちろん、オーナーは解約時期(通常は即時でしょう)について、破産管財人に意見を述べることが可能です。

破産管財人が賃貸借契約を解約した後、オーナーはテナントの明け渡しを受け、オーナーにおいて備品および商品を撤去し、原状回復を行うことになります。賃貸借契約が解約されるまでの間、オーナーが行えることはほとんどありません。