賃貸物件の入居申込書がほぼ同時に提出された場合について

 本日の話はあくまでも東京都区内における内容です。他のエリアでは該当しない場合がありますので予め御了承願います。

 賃貸物件の募集を行うと、入居申込書をほぼ同時に複数の方からいただくことがあります。この場合、入居申込書は、早く提出したものを優先的に受け付けるのが原則です。

 しかし、以下の条件に該当する入居申込書は却下され、他の入居申込書がほぼ同時に提出されている場合はそちらを優先することになります。

1.条件付きの入居申込書
 入居申込書に希望条件を記載される方がたまにいらっしゃいます。多いのは家賃や敷金の値引き要求です。「家賃10万円とのことですが、9万円でお願いします」とか、「敷金1か月を0.25か月にしてください」等と入居申込書に平然と書いてくる方がいらっしゃいます。

 他の不動産会社を経由して提出される入居申込書にもこのような記載があるものが散見されます。客付け側として入居申込書を受け取った不動産会社が入居希望者に説得しても、条件について譲らないのでしょう。

 残念ながら、このような入居申込書はオーナー様において即時却下されることが大半です。家賃や敷金の金額交渉は入居申込書の提出前に行うべきです。

 オーナー様におかれても、このような入居申込書が提出された場合は却下することをお勧めします。入居希望者がなかなか現れない物件であっても、ここで家賃の値引き等に応じると、更に一層の値引きを求められることがあります。

2.契約希望日や入居希望日としてかなり先の日程が記載されている
 契約希望日や入居希望日としてかなり先の日程を記載した入居申込書も受付を却下されることになります。オーナーおよびオーナー側の不動産会社において、最も警戒するのは、入居申込書を提出した方が他の物件にも入居申込書を提出しており、入居が一方的にキャンセルされることです。

 入居申込書を受領し、オーナーが入居を認めた場合には、その時点で入居申込書の受付を停止し、ネット上の広告を削除します。それにもかかわらず入居申込書を提出した方が他の物件に入居した場合は、オーナーとしては機会の損失になります。

 入居申込書に記入されている契約希望日や入居希望日がかなり先の場合は、他の物件も探している最中であり、入居をキャンセルされる可能性があると疑われることになります。多くの場合、オーナー様の判断により入居不可となります。

 入居申込書に記入されている契約希望日や入居希望日が現在より何日先であった場合に入居不可となるかは様々です。私の会社がある東京都目黒区では2週間としているところが多いですが、1週間や10日と定める不動産会社があります。

3.入居申込書に虚偽の内容が記載されている
 入居申込書に虚偽の内容が記載されている場合は、当然ですが入居不可になります。勤務先を詐称しても、後述する家賃保証会社(賃貸保証会社)が調査することにより、勤務先の詐称等は露見します。

4.家賃保証会社(賃貸保証会社)が保証契約の引き受けを拒否した
 令和2年4月に施行された改正民法により、ほとんどの物件において家賃保証会社(賃貸保証会社)の利用が必須になりました。家賃保証会社の審査が入居の可否を決定している感があります。

 家賃保証会社では勤務先、年収、過去の滞納歴を調査します。特に滞納歴がある場合は保証契約の引き受けが即時に拒否されます。この場合は、入居申込書は却下されます。

5.意思疎通が出来ない外国人による入居申込
 入居希望者が外国人の場合でも基本的には日本人と同様の入居審査を受けることになります。

 グローバル化が進行していることから、外国人であるという理由のみで入居を断るオーナー様は次第に減っている感があります。日本語または英語による意思疎通がで可能であれば、入居を断わられることは少なくなっています。

 しかし、入居希望者が日本語または英語による意思の疎通ができない場合は、オーナー様または管理会社の判断として入居をお断りすることがあります。

 日本語がわかる友人に代筆してもらったのか、代筆による入居申込書が提出されたことがあります。通訳が身近に存在することを身振り手振りで示していましたが、本人は日本語・英語のいずれも理解できません。これでは入居希望者において重要事項説明書、賃貸借契約書の内容を理解できません。

 オーナー様や管理会社においても意思を伝達する手段がない以上、多くの場合において入居申込は却下されます。意思疎通が出来ず、重要事項説明書、賃貸借契約書の内容を全く理解できないのでは賃貸物件における共同生活に支障が生じ、本人に不利益が生じる恐れが大きいです。

 入居申込の却下は仕方ないと考えられます。なお、これはいわゆる「外国人差別」ではありません。