非公開物件について(その3、賃貸物件)

一昨日は実需用売買不動産、昨日は収益用不動産の非公開物件について書きました。

本日は、賃貸物件の非公開物件について書きます。私の会社は東京都目黒区にありますが、賃料が通常の相場通りであり、大きな問題が見当たらず、そこそこ快適に暮らせる居住用賃貸物件を非公開にすることはまず考えられません。

来店されたお客様から「インターネットに掲載していない物件だけ紹介して欲しい。」とか「非公開の物件しか良い物件はないと聞いたので、非公開物件だけを紹介して欲しい。」と言われることがよくあります。

非公開物件がないことを伝えると「出し惜しみをしているんだろう。」と言われたり「他の不動産屋に尋ねたら非公開物件の束を見せてくれた。そちらにもあるはずだ。」等と言われることがあります。しかし、無いものは無いとしか言えません。

目黒区は東京の中でも賃料が高額な地域です。山手線の外側にある区の中でも最も賃料が高額です。高額な物件を借りられる方は減少しているため、賃貸物件相互の争いが激化しています。非公開にして出し惜しみなどをしようものなら、その不動産会社はオーナー様から出入り禁止にされてしまいます。

入居者募集を開始すると、大半のオーナー様は1週間もしないうちにレインズやインターネットに掲載したかを尋ねてきます。オーナー様は空室情報を広く公開し、新しい入居者を早く決めて欲しいと思っています。

相場に則った賃料でそれなりに快適な物件は広く公開されます。レインズだけではなく、インターネットのポータルサイトや取り扱い不動産会社のページに多く掲載されています。

ちなみに、先に書いた「非公開物件の束」は「何年か前に使用した広告図面の束」であるとしか思えません。春先になると、賃貸物件の解約が一斉に行われます。退去後に新たな入居者を募ることになりますが、この場合は入居者募集用の広告図面を新たに作成しなければなりません。この図面は不動産公正取引協議会が定める内容に沿って作成する必要がありますが、必要な掲載内容は頻繁に変わります。このため、以前に使用した入居者募集用の広告図面を再利用することは困難です。

この広告図面ですが、作成にはかなりの時間を要します。春先になると、賃貸の専門店では広告図面の作成に追われます。事務員は一日中、何枚ものの図面を作成し続けますが、一斉に解約されることから新しい広告図面の作成が間に合いません。このため、「未公開」のまま何日も放置されることがあります。いずれ公開されますので「非公開物件」ではありません。目黒界隈で、相場通りの賃料で何の問題も無い賃貸物件が非公開物件になることはありません。

現実には「非公開物件」は存在します。きわどい話になりますが、お客様に紹介するとトラブルの発生が避けられない物件や危険な物件は「非公開」にしてしまうことがあります。なお、当社の場合は「非公開」にするのではなく、最初からご紹介をお断りすることが大半です。

多くは居住された方の生命・身体の安全を保証できない状態の物件や、何らかのトラブルが避けられない物件です。朽廃が酷く、錆で朽ち果てる恐れが高い外階段を修理せずに貸し出す物件、本来は室外に設置しなければならない湯沸かし器を室内に設置して排気ガスを室内に放出しているために一酸化炭素中毒による死亡事故が発生してもおかしくない物件、雨漏りを放置しているために部屋がカビだらけの物件、おかしな性癖を有する住人がいる物件、反社会的勢力の関係者らしき者が出入りする物件等です。

オーナーに指摘すると「黙れ。お前は客を連れてくればいいんだよ。」等の高飛車な言い方をされることがあります。この場合に「非公開物件」にしてしまうわけです。事故やトラブルが発生した場合、仲介業者も責任を負わされることがありますので仕方ありません。特に、死亡事故や重傷事故が発生する恐れが高い物件は民事訴訟を提起される場合があることから仲介は困難です。このような物件は、改修をしてくれないと紹介できないのです。

東京都区内における賃貸物件の「非公開物件」には危険な物件やトラブル発生が避けられない物件が多いので要注意です(未公開物件を除く)。自分から「非公開物件だけを紹介して欲しい。」と言うことは避けるべきです。

なお、賃貸物件の数が少ない地域では、本日の投稿内容は当てはまらないことをお断りしておきます。