東京都区内では収益用不動産の利回りが低く、危険領域

 利回りが高い収益用不動産を欲しいという問合せが数多くあります。東京都区内において最近売り出されている収益用不動産(1棟マンション、1棟アパート)の表面利回りは3~4%にしかならない物件が大半になりつつあります。

 「表面利回り5%超の物件を欲しい」という問合せをとても多くいただいているのですが、そのような物件は極めて少ないです。

 築浅で駅近かつ高利回りの物件が売り出されることがたまにあります。しかし、通常は1週間以内に誰かが現金一括で購入してしまいます。現金一括で購入するのは大企業だけではありません。円安が続いていることもあり、外国の投資ファンドによる現金購入がかなり増えています。

 通常、事業用ローンを利用して購入する場合は審査に2~3週間を要します。事業用ローンを利用して利回りが良好な収益用不動産を購入することは極めて困難な状況になりつつあります。

東京都区内にある満室時想定利回り3~4%の物件は空室リスクに耐えられないかも

 不動産を購入すると、固定資産税および都市計画税が毎年発生します。さらに建物および設備の維持費用が発生します。利回りが低くても売上げは確実に発生しますが、問題は空室リスクです。

 東京都区内の住宅における空室率は10%を超えるところが多く、筆者の会社がある東京都目黒区では28%超です。原因の一つは新型コロナウイルス感染症の蔓延による賃金カットを受けた入居者が都区内の物件から一斉に退去したことにあります。都区内の物件は家賃が高額なので、特に若い単身者やいわゆる中間層のファミリーが家賃の安い郊外に転居しました。

 また、飲食店の経営者が一斉に事業から撤退し、残った資金で収益用不動産を数多く購入したことも原因です。需要を見込み、元々は分譲マンションを建設する予定であった土地に新築の収益用1棟マンションが数多く建設されました。都区内における入居希望者が減少しているのに賃貸の部屋数が急増したことから空室率が急上昇しました。

 コロナ禍はほぼ終息したようですが、多くの企業においてリモートワークが行われています。家賃が安い郊外の物件でも、駅近や大型ショッピングセンターが近ければ、食料品や生活用品等の購入が容易です。転居して郊外の生活に慣れた方が、東京都区内に戻る理由が見つからなくなっています。

 東京都区内で平均の空室率が10%を大きく超える状況は、当分の間続くと思われます。事業用ローンを利用して満室時の想定利回りが3~4%にしかならない物件を購入し、空室が数多く発生したらたちまち経営破綻する恐れがあります。

新築は減価償却費に注意

 新築物件の場合、建物に係る固定資産税および都市計画税がどうしても高額になります。また、減価償却費が多額なので利回りがかなり高くないとキャッシュフローの面で不利です。

 「新築物件の方が入居者に人気がある」、「新築物件は利回りが低くて当然」等のセールストークがよく展開されています。しかし、新築物件は利回りがかなり高くないと危険です。

 また、想定賃料をごまかして意図的に高額な金額を設定している物件、入居者がいわゆるサクラである物件等があるので注意が必要です。

どうしたらよいか

 都区内の物件は利回りが低すぎるので、事業用ローンを利用して購入することは極めて危険です。現金一括払いによる購入ができず、購入希望エリアにこだわらない方には郊外の駅近、または関西圏の中古物件をお勧めしています。その方が利回りが高いからです。