単身者向けの賃貸物件は人気低迷か(東京都区部)

 東京は10日に警報級の大雪になるかもしれないとの予報がありましたが、都区部ではお昼頃に雪から雨に変わりました。このため、大規模な積雪で公共交通に影響が出る事態は避けられました。

 ご承知の通り、不動産業界は繁忙期に突入しています。毎年1~3月は賃貸、売買ともに最も多くの引き合いがある時期です。賃貸物件の空室を効率よく埋めることができるのはこの時期であり、4月を過ぎると空室に対する引き合いはほとんどなくなります。

 繁忙期は賃貸物件の空室を埋めたいオーナー様が一番ハラハラする時期です。繁忙期に空室を埋められなかった場合、多くのオーナー様は激しく落胆されます。

 新築戸建住宅や新築のマンションを販売する会社は、1~3月の繁忙期前に完成させ、繁忙期中に売却を済ませようと努力します。このため、1~3月は物件が最も多く出回る時期になります。

ワンルームおよび1Kのマンションは人気低迷

 新型コロナウイルス感染症の蔓延およびコロナ禍の長期化により、主に飲食店が経済的な打撃を受けました。多くの飲食店が倒産や廃業したことはご承知のことであると思います。

 飲食店で働いていた多くの若い単身者は解雇され、都心にある家賃が高額なワンルーム、または1Kの区分マンションに住むことができなくなりました。借りていた賃貸物件を引き払い出身地に帰郷された方、または郊外の家賃が安い物件に転居された方が数多くいらっしゃいます。

 このため、都心のワンルームまたは1Kの賃貸マンション、アパートの空室率が急激に増加しました。現在、賃貸経営が破綻寸前の状態にあるオーナー様が数多くいらっしゃいます。特に事業用ローンを借り入れて収益用不動産を購入したオーナー様におかれては、空室率の激増が死活問題になっています。

 現在、新型コロナウイルスの主流はオミクロン株と言われる変異株です。以前に流行したデルタ株等と比較すると毒性が少なく、治療のノウハウが蓄積されているという理由により飲食店の閉店、時短営業の奨励は行われず外国人の入国規制もかなり緩められています。

 都市部の飲食店等で働いていた単身者が戻ってきてもよさそうに思えますが、東京では単身者用のマンションおよびアパートに対する引き合いが増えていません。

 繁忙期であるにもかかわらず、単身者用の空室が埋まらないという現象が起きています。私の会社は東京都目黒区にありますが、駅前にある賃貸専門の不動産会社の方によると「問合せが全くないし、来店者の数も異様に少ない。今年はおかしい。」とのことです。

 東京都内の賃貸物件を借りる場合の初期費用が高額であることが、人気が伸び悩んでいる原因であるように思います。入居の際は敷金、礼金、仲介手数料、家賃、前払い賃料、家賃保証会社の保証料、引越トラック、火災保険料等が必要になりますが、合計するとかなり高額です。これらを捻出できないことにより都心の物件に入居しない方が増えているのだと思います。

 また、最近は電車の高速化が進み、大規模小売店舗が郊外にも数多く進出しています。高額な費用をかけてわざわざ都心の物件に引っ越し、高い家賃を支払って生活するよりも、郊外の家賃が比較的安い物件を借りて郊外の職場に勤めることで満足する方が増えているのだと思います。

 東京都区内で単身者向けの部屋で構成される収益用マンションやアパートを購入する際は、当該エリアにおける空室率および賃料相場に一層注意する必要があると言えます。