不動産売買契約書、重要事項説明書等を保管するべき期間

2022年10月26日

 不動産売買を行う際に交付される重要事項説明書および不動産売買契約書の保管期間について尋ねられることがあります。

不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効は、最長で行為の時から20年

 売買契約後に何らかのトラブルが発生したとします。売主および買主の双方ともに不法行為が行われていることを認識していない場合、民法は「不法行為に基づく損害賠償請求権」の消滅時効期間を20年と定めています。このため、売買契約の相手方との関係では最低20年間の保管が必要と考えられます。

ローンの返済中は保管する必要がある

 住宅ローンとして住宅金融支援機構が提供するフラット35を利用する場合、契約期間は35年になります。不動産売買契約書および重要事項説明書は金銭消費貸借契約を締結する前提となる書類であることから、ローンの返済が完了するまで保管する必要があります。 

重要事項説明書に境界標の位置、隣地の建物・水道等の越境状況、その他が記載されていることが多い

 契約締結の時期が20年以上前であっても建物や水道管などの越境状況が重要事項説明書に記載され、将来において再建築する際は越境状態を是正する覚書が締結されていることがあります。 

 越境の問題に限らず、境界を画定するために取り決めた事項、入会地がある場合の入会権、囲繞地通行権と通行料、その他の様々な内容が重要事項説明書に記載されていることがよくあります。

 この重要事項説明書に基づいて不動産売買契約が成立しているのであれば、売主および買主の双方が越境について了解した上で売買契約を締結した証拠になります。

覚書、取り決め事項が登記簿に掲載されることは少ない

 重要事項説明書に記載されている覚書や取り決め事項が登記簿に記載されることは極めて稀であり、所有者の相続、建物の再建築、または売買による所有権移転の際にこれらの覚書や取り決め事項が問題になることがあります。そして問題化するのは最初の不動産売買が行われてから数十年以上後になることがよくあります。

結論

 あくまでも筆者独自の見解になりますが最低で20年、買主がローンを利用して購入した場合はローン返済が終わるまで、重要事項説明書に何らかの覚書、入会権、通行権等が記載されている場合は半永久的な保管が必要であると思われます。

 特に売主様から「長期の保管は不要ではないか」と質問されることがありますが、覚書や諸権利に関する問題が具体化するのは契約締結後の何十年も後であることが多いです。トラブルが発生した際の解決を容易にするため、重要事項説明書および売買契約書の長期保管をお勧めします。

長期間の保管が必要な他の書類

 重要事項説明書だけではなく、建物の建築確認済証、および検査済証等の保管を強くお勧めします。役所における保管期間は10年未満であることがよくあります。検査済証を保管していないと増改築の建築確認申請に支障をきたします。さらに建物を売却する際も売却価格が下がります。