大手不動産会社の営業担当が逮捕、歩合制給与の弊害?

2023年11月27日

 大手不動産会社の多くは営業担当職員に歩合制給与制度を採用しています。入社すると全ての同僚がライバルです。わからないことを先輩に相談したくても、先輩も自分と同じように競わされているのであまり教えてもらえません。平社員が苦労して見つけた顧客を上司が奪い、自分のみの手柄にすることは日常茶飯事です。やがてお客様の利益を全く考えず、自分の成績しか考えないようになります。

 このような職場環境に置かれると人格に悪影響が生じ、善悪の区別がつかなくなる者が出てきます。中には犯罪を犯そうとする輩が出てくることがよくあります。

 これから紹介する記事に記載されている者は、ある大手不動産会社の社員です。ネット検索すると、この者は営業担当であり、都内のある支店に勤めていたことを示す内容がヒットします。

 TBS NEWS DIGから引用します。

※掲載社の都合により元記事が削除され、リンクが切れることがあります。
※2022年9月16日追記:元記事が削除されたので、リンクを外しました。

※2023年11月27日追記:名誉権の問題があるため、引用記事中における勤務先名および容疑者の氏名を修正しました。

住友不動産販売の社員の男ら逮捕 「出前館」で他人のクレカ情報悪用し高級ワイン転売  被害総額は1000万円相当か
2022年9月7日(水) 12:26

食事の宅配サイト「出前館」でワイン350万円相当を不正に購入し、転売したとしてX社の社員の男ら2人が逮捕されました。

窃盗などの疑いで逮捕されたのは、X社の社員・A容疑者(22)と札幌市の無職・B容疑者(23)です。

A容疑者らは今年1月、仲間と共謀し不正に入手した他人名義のカード情報を使い、「出前館」に出店している酒店からスパークリングワイン50本、350万円相当を購入し転売した疑いがもたれています。

A容疑者は容疑を否認しB容疑者は黙秘していますが、被害総額はワインなどおよそ100本、1000万円相当にのぼるとみられています。

TBS NEWS DIG

 犯罪を行ったことが事実であれば、罪を償ってもらうしかありません。

 大手の不動産会社では、給与制度に歩合制を採用しているところが多いです。会社名のブランドに惹かれ、さらに給与が歩合制ということで「一攫千金を狙えるかもしれない」と考えて入社する若い方が多いのですが、思うように稼げなかった場合のペナルティーが厳しく、とても緊張した職場環境にさらされます。このため、長続きせずに数年以内に退職する方が多い実態があります。また、中には自暴自棄になり犯罪に走る者が生じがちです。

 私の経験上、取引先の不動産会社が営業職に歩合制を採用している場合、同僚の誰にも相談出来ないことが原因なのか知識が乏しい者や不勉強な者、遵法性に対する意識が著しく低い者、顧客を騙して会社の預り金を自分の懐に入れようとする輩などが多くいます。

 誰でも知っていると思われる大手不動産会社(上場企業)の営業担当から、ある土地を商業施設用地として提案されました。ところがこの土地の用途地域は第一種低層住居専用地域に指定されています。このため「この土地は一種低層なので商業施設を建設できません。近いうちに用途地域が変更される話があるのですか。」と尋ねたところ、「一種低層に商業施設は建てられないのですか?」と逆に訊かれて唖然としたことがあります。

 また、私の会社が売主である住宅について、中堅の不動産会社(買主側業者)の営業担当から、「金融機関の担当者から『住宅ローンの貸出金額は物件価格の8割迄。それ以上は貸せない。』と言われました。購入希望者は全額を住宅ローンで賄うことを希望しており、貯金はほとんどないようです。通常の売買契約書の他に物件価格を25%上乗せした売買契約書を別に作成し、金融機関に提出したいので対応していただけませんか。」と頼まれたことがあります。 

 これは業界用語で「書き上げ」と言われる違法行為です。提案した営業担当も歩合制給与で雇われていました。この要望を受けると金融機関から詐欺罪で告発され、損害賠償を求められることになります。宅地建物取引業法が定める事務停止処分になりますし、場合により宅地建物取引業免許も取り消されます。当然ですが、この提案はお断りさせていただきました。 

 ある住宅の売買契約を締結する前日の夕方に、仲介する大手不動産会社(売主側業者、上場企業)の営業担当が買主様のところに現れ、「手付金(500万円)をこの場で今すぐに現金でもらいたいので、よろしくお願いします。その方が明日の契約を早く終わらせることが出来ます。」と言いました。「領収書をこの場でいただけますよね。」と尋ねたら、「明日、売主から契約の席でお渡しします。」と言います。「今、この場でもらえないのですか。」と尋ねたら、「明日になります。」の一点張りです。

 あくまでも想像ですが、この営業担当は歩合制のノルマがきつく、職場環境も良くないことから退職を考えていたところ、契約直前の客が現れたので金銭を騙し取り、逃亡することを企てたものと思われます。買主様は「領収書をもらえないのであれば、手付金はお渡ししません。」と伝え、お帰りいただいたとのことです。

 全て「歩合制」がもたらす弊害であると思います。しかし、大手不動産会社の幹部には「歩合制にするから会社の業績がアップする」とか「自分も歩合制の環境で鍛えられたのだからこの制度は維持するべき」とする考えが染みついており、直ちに変えられる状況ではありません。

 このような状況が長く続くと公的機関から不動産業全体に対し、新たな規制が設けられる恐れがあります。多くの場合、規制が設けられると既存の多くの業者が不利な立場に追い込まれます。

 「歩合制」については、業界全体として再検討する時期が近づいていると思います。