困った相談(その25、再建築不可の物件が全焼したが再建築したい)

※相談事例です。プライバシーを尊重するため、相談内容の一部をアレンジしています。

 相談者は接道要件を満たさない土地に建つ戸建住宅を不動産競売で購入しました。前所有者の退去後にリフォームを行い、高利回りの収益用戸建住宅として10年近く運用していました。

 ところが隣家で火災が発生し、この収益用戸建住宅が全焼しました。火災発生時に入居者は外出しており、怪我はありませんでした。

 問題は、全焼した建物が建っていた土地が再建築不可とされていることです。この土地は路地状敷地(いわゆる旗竿地)であり、通路部分の幅は最も狭い箇所で1.8mです。

相談内容

1.建物を再建築したいが、建築基準法は通路部分の幅が2m以上ないと建築できない旨を定めている。1.8mの場合は絶対に建築できないのか。 
2.知人に相談したところ「建築不可または再建築不可の土地でも建物を建てます。無届けでの建築にも対応します。」という建築業者を紹介され、建物の建築工事を勧められている。この業者を利用した場合の問題点は何か。

1.について

 特定行政庁(東京都区内においては区役所)が開催する建築審査会において、建物を建築しても火災等の際に危険が発生しない状況であると判断されれば例外として建築が認められることがあります(建築基準法第43条第2項第2号)。

 あくまでも東京都区内における運用になりますが、通路部分の幅が2m未満でも以下の要件を全て満たす場合は例外的に建築が認められる可能性があります。この場合は、建築審査会に申請することをお勧めします。

・幅員は、最も狭い箇所でも1.8m以上である。
・土地(通路部分)の隣地にある建物は境界から離れている。または隣地の現況は空地である。
・確定測量が行われ、通路部分の幅員が確定している。

 ただし、実際に建築が認められるか否かは各々の事案について個別に判断されるので、申請すれば必ず建築が認められるわけではありません。また、通路の幅員が1.8m未満の場合は、建築不可とされても仕方ありません。

  相談者には建築審査会に申請することをお勧めさせていただきました。

2.について

 このような建築業者は以前より少なくなりましたが実在します。この建築業者を利用していわゆる「無届け建築物」を建築し、行政に発覚した場合は取り壊し命令が発令される恐れがあります。取り壊し命令に応じない場合は行政代執行による取り壊しが行われ、その費用は建物の所有者に請求されます。

 このような建築業者はいわゆる「アウトロー」であり、背後に反社会的勢力が存在する可能性が極めて高いです。建築後にみかじめ料や高額な上納金を請求されることが容易に想定されます。

 件の建築業者は「このあたりは無届け建築物が多いので全て摘発できない」、「建築してから数年が経過すれば摘発の対象から外れる」、「賃借人を入居させれば取り壊し命令は発令されない」などのセールストークを展開したそうです。「全く心配ない」と言われたとのことですが、この建築業者が言ったことは全て「ウソ」です。行政に発覚したら大事になります。 

 無届け建築物の取り壊し命令が発令されてもあまり報道されないので「取り壊し命令はほとんど発令されない」という「誤解」が広まっているだけの話です。

 私の会社がある東京都目黒区では違法建築物の取り壊し命令や違法増築箇所の原状回復命令がよく発令されています。賃借人がいる場合でも容赦してくれません。

 酒気帯び運転やあおり運転についてはほとんど放任に近かったものの、重大な事件が発生したことをきっかけとして社会問題になりました。現在、行政はこれらについて積極的に摘発しています。

 将来、無届け建築物が多数建っているエリアにおいて「違法建築物撲滅キャンペーン」などが突然始まり、行政が手のひらを返したように摘発を始める恐れがあります。摘発された際に「以前は認めてくれていたのに」と主張しても「法律は建築を認めていないので取り壊すように」と言われて終わりです。

 それに無届けで建物を建てる際に融資に応じる金融機関は皆無です。

 無届け建築物の建築を発注することは違法行為であり、建築した場合には財産上の多額な損害を被る恐れがあります。相談者には建築しないことをお勧めしました。