困った相談(その20、不動産競売になる物件を競売以外で購入したい)

 不動産競売にかけられることが決定した物件は地方裁判所が公告し、インターネットに掲載されます。情報には誰でもアクセスできるのですが、この情報を参照した方から「不動産競売の入札期間が開始する前に物件を購入できないか」という問合せをいただくことがあります。

 不動産競売にかけられることが決定していても、「任意売却」が併行して行われることが多いので、任意売却において提案されている価格で購入する申し出をすれば、購入できる場合があります。

 しかし、任意売却における価格は不動産競売における売却基準価額(地方裁判所の委嘱により不動産鑑定を行った不動産鑑定士が算出した物件価格)よりも遥かに高額です。物件により2倍以上の価格が設定されていることがあります。売却基準価額で購入できることは、まずありません。

 また、任意売却が行われていない物件があります。多くは不動産の所有者において不動産競売にかけられた理由について納得できていない物件です。不動産競売は不動産の所有者の意思にかかわらず、抵当権者または根抵当権者、あるいは債権者による「競売を実行して欲しい」という申し立てに基づき、地方裁判所の判断により実施されます。不動産競売は所有者の意思に基づかず実施されることから「不動産競売は納得できない」と主張し、競売後の立ち退きに応じない所有者がいます。このような物件では任意売却の提案をしても「売却にも立ち退きにも応じない」として門前払いされます。

 問題は更にあります。任意売却による購入希望者が現れたことから抵当権者、根抵当権者、債権者に競売を取り下げて売却するように依頼しても、売却に応じないことがあります。競売が実施された場合、任意売却における価格よりも高額で売却出来るという見込みが生じた場合は、抵当権者、根抵当権者、債権者が任意売却に応じませんので任意売却は成立しません。

 それに、裁判所が競売物件の期間入札に関する公告をしてから競売が開始されるまでの期間は1か月もないことがほとんどです。購入希望者が住宅ローンを利用して物件を購入することを希望しても審査に間に合わないことがほとんどです。

 それに競売物件は状態が良くないことが多く、建物の場合は高額な修繕費が発生することがほとんどなので、住宅ローンの融資に応じる金融機関はほとんどありません。不動産競売にかけられる建物の多くは十分なメンテナンスが行われておらず、傷みが激しい状態です。

  「不動産競売の入札期間が開始する前に物件を購入できないか」という問合せをされた方には上述の内容を説明させていただくのですが、「競売の開始前に購入すれば安く購入できる」と盲信している方が多く、なかなか納得しないので「困った相談」の一つです。