オンライン内見の是非(賃貸物件のオーナー様へ)

 新型コロナウイルス感染症に関する報道が減少している昨今ですが、東京都では1日に3000~5000人程度の新規感染者が発生している状況です。

 不動産取引を行う際における感染防止に役立つとして、多くのシステム開発会社が内見から契約までを完全にオンライン化できるシステムの開発に取り組んでいます。

 多くはZoom等による面談、物件の動画閲覧または営業担当による現地生中継、重要事項説明書・契約書および付随資料の作成等を一つのシステムで全て行えるというものです。肝になるのは動画作成・編集システム、および物件内部を生中継するシステム機器であり、私の会社にもこれらのシステムを導入して欲しい等の営業電話、メールが数多くあります。

 しかし、オーナー様の中にはオンライン内見で入居した入居者からのクレームが多いとして、オンライン内見への対応を断わられる方がいらっしゃいます。

 クレームの内容は、従来利用していた家具が部屋に入らない、隣室や階上の部屋から発生する音がうるさい、キッチンやバスルームがカビだらけで不衛生、コンセントの位置が不満、ペット臭やタバコ臭が酷い等です。

 これらの多くは現地を訪問して行う内見方法であれば入居前に把握できるものの、オンライン内見では入居前に把握できない内容が多いです。

 「オンライン内見を選択し、納得した上で賃貸借契約を締結したのだから上述の内容であれば甘受して欲しい。」とお考えになるオーナー様が多いと思いますが、これらの問題を重大であると考える賃借人は意外に多く、早期に退去する原因になります。

 内見方法がオンラインでなければこれらのクレームの大半は発生せず、早期に退去することもないと考えられることから、「オンライン内見はしないで欲しい」と依頼されるオーナー様が次第に増えている感があります。

オンライン内見に対応している物件、特に動画を用意している物件はごく少数

 オンライン内見に対応しており、物件の詳細を説明する動画がある物件は、全体の1~2割程度ではないかと思います。前述したとおり、オンライン内見を希望しないオーナー様が次第に増えていることと、特に繁忙期には動画の作成および編集に携われる人員を不動産会社が確保できないというのがその理由です。

 賃貸借契約の前に行う重要事項説明および契約についてはZoom等を利用したオンラインで行うとしても、入居希望者に現地を訪問していただいて室内を確認してもらうという従来からの内見方法は、かなりの割合の賃貸物件において継続されるのではないかと思います。 

 長期的に見てオンライン内見は、外国に居住されている方が日本国内の収益用不動産(1棟マンション、1棟アパート、ソシアルビルなど)を契約不適合責任免責の条件で売買する等の限られた場合にしか行われなくなるのではないかと考えています。