一括査定サイトは曲がり角?

 不動産の一括査定サイトについては、査定結果の精度に大きな問題があり、利用者において弊害が生じる恐れがあるので利用を推奨しない旨を以前の投稿に書きました。

 一括査定サイトの利用料は、査定を利用する方は無料です。しかし、実質的には査定に参加する不動産会社が支払っています。一括査定サイトにおける査定を担当する不動産会社は、まだ公開されていない不動産の媒介契約を取得したいことから高額の参加費を支払い、査定をしています。

 査定の依頼があった際に、不動産会社は不動産物件の概要を調査し、査定を行い、資料にまとめます。それには相応の時間を要し、人件費が発生します。

 マンアワーを考慮すると、査定依頼1件当たり1~2万円程度の経費が発生します。その他に、一括査定サイトの運営会社に対する高額の参加費が発生します。

 一括査定サイトにおいて査定を受ける不動産会社としては、売却に関する媒介契約を取得したいことから実際の査定価格に多少上乗せした金額を査定価格として提示することが多いです。このため、最も高い金額を提示した不動産会社の査定結果を鵜呑みにしてしまうと、売却を依頼しても購入希望者がなかなか見つからないという状況に陥りがちです。

 また、査定を依頼すると不動産会社の営業担当の訪問を必ずと言って良いほどに受けることになります。これらの理由から、以前の投稿において一括査定サイトの利用は推奨しないできない旨を書きました。

 最近では、査定を依頼する方においてもこのあたりを心得ているようで、査定依頼者が査定結果を受け取った後に査定を行った不動産会社が電話をかけても電話に出ない、または査定依頼時に架空の電話番号を入力する方が増えています。また、査定を行った不動産会社の営業担当が訪問しても居留守をする、または「査定を依頼したことはない」などと言い、高圧的な態度で追い返す方が増えています。

 「査定結果さえ手に入ればそれで良い」と考える依頼者が増えているようです。主に、以下のような方であると思われます。

1.売却する意思は全くなく、単に自分が所有する住宅の価値を知りたい。
2.売却を依頼する不動産会社をほぼ決めているが、その不動産会社における査定結果と一括査定サイトにおける査定結果を比較したい。
3.査定方法について無知な金融業者が貸金の回収を意図し、所有者になりすまして査定を依頼している。

 これでは不動産会社が多額の費用をかけ、一括査定サイトから査定を募集しても媒介契約を得ることは極めて困難です。一括査定サイトから1件の媒介契約を取得するために要する費用はあまりにも高額であり、投資効果に見合うだけの収入を得ることは困難です。

 今後、一括査定サイトにおける査定担当会社は次第に減るものと思われます。一括査定サイトは、明らかに曲がり角に差し掛かっていると言えます。