心理的瑕疵がある賃貸物件を、告知せずに貸した場合の責任

ご承知のとおり、賃貸物件の内部で賃借人が死亡した場合、その賃借人が居住していた部屋が事故物件として扱われます。事故物件になると、新たな入居者を募集する際には事故物件である旨を告知する必要があります。

しかし、事故物件であることを告知すると借りる方が少なくなることから家賃をかなり下げなければなりません。それでは困るということで、心理的瑕疵があるのにそれを告知しないで次の入居者を募集するように、オーナーが不動産会社に依頼することがあります。

オーナーから懇願されたことから、心理的瑕疵がある旨を告知せずに新たな入居者を募集し、そのまま入居させてしまう不動産会社があるという話を聞きます。

しかし、心理的瑕疵があることを告げずに入居させた場合、その入居者が同じ建物における入居者から自室が事故物件であるとの話を聞き、それが事実であることが判明して大騒ぎになることがあります。

事故物件であることを知りながら告げなかった場合における不動産会社およびオーナーの責任
意外に思われるかもしれませんが、賃貸物件が事故物件であっても、不動産会社には事故物件であるか否かを積極的に調査する義務はありません。

不動産会社はオーナーに対し、事故物件であるか否かを確認します。その際にオーナーから事故物件ではない旨の陳述があれば、不動産会社は入居者募集を行う際に事故物件としては募集せず、賃貸借契約締結前の重要事項説明においても事故物件であることを説明しないことになります。事故物件であることについて不動産会社が知らなければ、不動産会社が責任を問われることはありません。

この場合、後で事故物件である事実が判明した場合は、オーナーのみが責任を問われることになります。

なお、賃貸物件の管理を不動産会社に委託している場合において入居者の死亡事案が発生し、その不動産会社が状況を把握している状況であるにもかかわらず、事故物件であることを隠して入居者を募集し、入居させた場合にはオーナー及び不動産会社の双方が責任を問われます。

オーナー、不動産会社が責任を問われる場合、その内容
不動産会社は宅建業法第35条および第47条に反する行為であることから事務停止処分を受ける可能性があります。入居者が支払った仲介手数料は、全額の返還を請求されることになります。

さらに、賃借人が転居を希望した場合は新たな物件への引越に要する費用、および慰謝料を請求されることになります。オーナーにも責任がある場合はオーナーおよび不動産会社の双方に共同不法行為者としての責任が生じ、連帯して損害賠償責任を負担することになります。

また、賃借人が事故物件に入居してから心身に異常をきたした場合に、治療費を負担するべきかが問題になりますが、因果関係を証明できないことが多いです。このため、慰謝料に含める形で解決を図ることが多いようです。