心理的瑕疵に関するガイドラインがなかなか決まらない

令和2年2月5日(水)に、「第1回 不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」を国土交通省が開催しました。

心理的瑕疵に係る適切な告知、取扱いに係るガイドラインの策定に向けた検討を開始したとのことですが、審議の過程が公開されていません。1年以上が経過した現在でも、検討の進行状況がわかりません。

取引対象の不動産における過去の死亡事故等の、いわゆる心理的瑕疵をどのように取扱うかのガイドラインを策定するとのことですが、その目的は中古住宅市場の活性化にあるようです。

すると、今までは事故物件であるとして告知義務があるとされていた内容について、ある程度は告知不要にしたいとの思惑が見え隠れします。

賃貸物件の自室で自殺が発生した場合、その部屋を次に貸す際に入居者に対する告知義務があります。しかし、その告知された方の退去後、その次に入居した方に告知する必要があるかというと、近時の判例では告知義務はないとされています。

郊外や村域で賃貸物件内における自殺が発生した場合、このことは付近の住民に長期間記憶されることが多いです。郊外や村域では、死亡事案発生直後の入居者のみに告知義務があるとする見解には納得しかねる方が多いのが現状です。

いわゆる「孤独死」が発生した場合、亡骸が室内に長期間放置されたことにより室内が汚れる場合と、お亡くなりになった直後に発見されたことから部屋が汚れない場合があります。

前者では告知義務があるものの、後者の場合には告知義務は無いと考えられますが、いずれの場合にも告知義務があるとする見解があります。さらに前者および後者のいずれの場合でも、死亡の原因が病気である場合には告知義務はないとする見解があります。

室内で自殺等が発生した場合におけるオーナーに対する損害賠償金額の算定方法、共有部における死亡事案が発生した場合の取り扱い、マンションの一室で複数人が殺された場合は建物全体を事故物件と見做すべきではないか等、容易に決められない難問が山積しています。学識経験者の間でも意見が割れる内容が数多くあり、容易には決着しない状況なのではないかと推察されます。

コロナ禍であることもあり、ガイドラインが完成する迄には相当の期間を要すると考えられます。