今回の緊急事態宣言が不動産取引に与える影響(不動産売買)

今回の緊急事態宣言は、不動産売買にも大きな影響を与えます。

今後は、住宅ローンの返済ができなくなったことを理由として売却される物件が増えます。既に飲食業および小売業の状況が酷いようですが、緊急事態宣言が発令されると、経営状況は確実に悪化します。正社員といえども解雇や賃金カットが行われることが確実です。

解雇や賃金カットをされたために住宅ローンの返済が滞ると、金融機関またはサービサー(債権の譲り受け先)は不動産の差押えを行い、売却を迫ります。いわゆる任意売却です。

任意売却を成立させるためには不動産会社が窓口となり、全ての抵当権者の承諾を得る必要があります。しかし、抵当権者の中には「競売にした方が高く売却出来るのではないか」と考える方がいることがよくあり、任意売却が成立しないことがあります。

任意売却ができない場合には不動産競売手続きに移行し、競売で売却されることになります。都心の物件の場合、市場流通価格の5~8割程度の価格で売却されることが多いです。郊外の場合は3割程度の価格になることが少なくありません。

売却後に残債が生じた場合は分割して返済することになります。返済できない場合は、自己破産を迫られます。このため、今後は自己破産が急増することが予想されます。

任意売却や不動産競売により不動産が売却される場合、買い手の大半は不動産会社になります。区分マンションまたは新しい戸建住宅の場合、不動産会社はリノベーションやハウスクリーニングを行います。古い戸建住宅の場合は取り壊し、更地として販売するか、建物を新築して売却します。価格は市場流通価格に設定されることがほとんどです。

不動産会社ではない一般の方から任意売却物件を買いたいという相談がたまにありますが、任意売却は時間との勝負であり、ローンの審査期間を待てないことがほとんどです。ほとんどの場合にローンの利用は認められません。購入する場合は現金一括による購入が原則になります。

住宅ローンの返済不能が理由ではない通常の売買ですが、緊急事態宣言の発令により内見の希望が大幅に減ることから売却に要する日数は確実に増加します。1~2か月程度で売却出来る物件であっても、売却までに半年以上を要することが想定されます。

また、現況が居住中の物件は、購入先を探しているお客様から嫌われる傾向が現れています。内見の際に感染することを恐れ、現況空室の物件のみを探されるお客様が増えています。現況居住中の物件は、売却までにかなりの日数を要することになると思われます。

まとめると、以下の通りです。

今後は任意売却や競売が増えることから、売物件の数が増える
売り物件の数が増えるが、安くなることはない
不動産会社が売主の物件が多くなる
現金一括で購入する場合を除き、相場より安く購入することは難しい

売却に多くの日数を要するようになる。特に現況居住中の物件ではかなりの日数を要する